裏で妹と仲良くしていた婚約者が調子に乗って婚約破棄を言いわたしてきました。面倒なので私は速やかに去りますね。
私の婚約者である彼プルトートは、裏で私の妹であるミミンと親しくしている。
その親しさというのは異常なほどで。
夜に二人きりで会い朝まで話し込むほどである。
私はそのことを知っていたけれど、すぐには言わなかった。知らないふりをしながら、二人が濃密な関係に発展している証拠を集めていたのだ。証拠も何もないのに問い詰めても逃げられるだけだろう、と思ったから、最初から先に証拠を集める方向性で考えていたのだ。
だが、二人は私が何も言わないのをいいことに、日に日に深い関係性へとはまり込んでいっていた。
そして。
「悪いが、君との婚約は破棄することにした」
その日プルトートはついに私との婚約を破棄することを宣言。
「婚約破棄?」
「あぁそうだ」
「また急ね。何か事情があるのかしら」
「正当な理由ならある」
あるのならぜひ聞いてみたい。
どう言うのか興味はある。
「その正当な理由とは?」
「俺は真実の愛を見つけた! それが理由だ」
……いや、それが正当な理由?
単に心変わりしただけではないか。
それを正当な理由だと言うのか。
だとしたら笑ってしまう。
恋人ならともかく。
「そう、真実の愛、ね……ミミンでしょう?」
「な。なぜそれを」
「知っているわよ。貴方、もうずっと、ミミンと常識の範囲を越えて仲良くしているみたいだものね」
私は微笑む。
「証拠を集めていた、だから黙って気づいていないふりをしていたのよ。婚約者がいる身でその妹に手を出すなんて、悪い意味で凄い人ね」
彼は急に焦り出す。
「ま、待って、違うんだ! それは誤解だよ! 妹さんとは確かに仲良しだけど、そんな、そ、そ、そんな、不健全なことはしていない!」
「いいのよ、今さら隠さなくて。すべて知っているから」
「すべて!? そ、それは、噂話か何かだろう!? だとしたら嘘だ!!」
「いいえ。事実を知っているの。証拠物を集めていたからね、調査員も派遣していたし、私は貴方たちのすべてを知っているわ」
彼は慌てて左右の足で交互に床を踏みしめていた。
それによってどすどす音が鳴る。
また、両手で頭を掻くような動作を継続して、かさかさという乾いたものが擦れるような音も同時に鳴らしていた。
「ま、私は婚約破棄を受け入れるわ。じゃ、これでね。さようなら」
私はこれ以上ややこしい人と関わる気はない。
それに、一度やらかした彼を真実ことなんてもうできないから、この関係を続けていても私自身辛いだけ。
ここで終わりにする方が私のためにもなる。
ただし、彼がどういうことをした人間なのか、世に明かすことはさせてもらうけれど。
◆
プルトートの婚約が破棄となった私は、これまで集めていた彼とミミンの見ていて恥ずかしくなるような行為の数々の証拠を世に出し、されたことを明かした。
本来こういうことに関しては明かさないのが王道のようなのだが、私は隠したくなかったので明かすことにした。
ミミンは両親から「我が家の恥晒し!」と怒られたうえ家から追放され、プルトートは社会的な評価を地に堕とすこととなった。
その後二人は共に生きていくということでお互い家と縁を切って新しい地へ出ることにしたそうだが。慣れない地で暮らすうちに段々関係性に日々が入って、やがて険悪になり次第に心は離れていったらしい。婚約者がいる中でひっそり関係を深める、という刺激がなくなったことも影響しているだろうが。
そうして二人の関係は終わって。
今では、プルトートは奴隷に身を堕とし、ミミンは男に買われることで何とか生活できているとのことだ。
◆
あの婚約破棄から数年、私は隣町で薬屋を営む青年と結婚した。
私は周囲からも祝福される結婚をすることができた。
今は薬屋を手伝いながら家事もこなしている。
穏やかで誠実な性格の彼との毎日は楽しい。
閉店後の夜に一緒に食事をするのも細やかな楽しみになっている。
◆終わり◆




