婚約者が路上で知らない女性といちゃついている場面を目撃してしまいましたので、絶対的な証拠だけ手に入れて去ります。婚約? 破棄ですよ。
「ねぇ~え、もっと遊んでぇ~」
「仕方ないな」
「いいのよぉ~好きにしてぇ~もっともっとぉ~」
「わがままだなぁ。……ぐふふ」
その日、私は、婚約者レッドが路上で知らない女性といちゃついている場面を目撃してしまった。
彼と女性は、人がいないところだからと油断していたのか、かなり過剰な触れ合いをしていて。それこそ、通行人が目にしたら驚いて飛び退くようなことを、平然と行っていた。
その時私はカメラを持っていたので。
すかさずその姿を撮影した。
「なっ!?」
――うっかり、レッドに気づかれてしまったけれど。
「お、おい!? どうしてここに!? 週末は用なかったんじゃ!?」
でも、この際、もう気づかれても構わない。
だってもう関係は壊れているから。
ここまでの行為を目にしてもなお許すことなんて絶対にできないから。
「私はちょっと買い出しに来ただけよ」
「か、かかか、勘違いすんなよ!? これはそういうのじゃない!!」
「……私、まだ、何を言っていないけれど?」
「ゆ、ゆゆゆゆ、許せん! 許せん! 許せん許せん許せん! はめやがったな!? クソ女!!」
逆に怒り出すレッド。
路上で恥ずかしいことをしておいてよく逆切れなんてできるわね、と思った。
「ま、精々そちらの女性と仲良くすることね」
それだけ言って、私はその場から離れた。
あそこで言い争いをする気はない。そのようなことをしても良い方向に進むとは思えない、だから私はあれ以上あの場で言葉を発することはしなかったのだ。無意味なことはしない主義である。
幸い、やらかしている写真も入手できたことだし。
ここは去って。
この証拠をもって、彼との婚約は破棄としよう。
精々恥をかくといい。
◆
実家へ帰った私は親にすべてを明かした。
すると両親も一緒に怒ってくれて。
父は「婚約破棄を告げる」と強く言ってくれた。
その後、我が家からレッドに対して、婚約破棄の決定が告げられた。
レッドはやけくそになって私の父に対し私の嘘の悪口を言い続け、それで父を本気で怒らせてしまい、婚約破棄に加えて侮辱罪の追加も狙うこととなった。
で、もちろん父は勝利した。
レッドは、他の女と路上でやらかしていたことで婚約破棄されるのに加え、侮辱罪を償うためのお金も払わなくてはならないことになった。また、女性とのいちゃつきの写真が社会へ流出したことで社会的に死亡、評判は地に堕ちたそうだ。また、知り合いや周囲からは嫌われ、股男と呼ばれ虐められるようにもなっていったそうだ。
そして、それから一年も経たないうちに、彼は自ら死を選んだらしい。
残念な結末。
でも可哀想とは思わない。
自ら死を選ばざるを得なかったすべての者に対してそう思うわけではないけれど。
彼の場合はどう考えても自業自得である。
すべては彼の行動が招いたことなのだから。
◆
ちなみに私はというと、広大な敷地の牧場を営む青年と結婚し、今は牧場内に建てた小屋にて定期的に写真展を行っている。
◆終わり◆




