パンの掴み方が好きでないからと婚約破棄されました。……何で!? 驚きは大きかったのですが、私は未来を見据えます。
その日、私と婚約者オーガレニアは、共に食事をしていた。彼が誘ってくれて、彼の家で少し食事をすることとなったのだった。
だが、私がパンをつまもうとした瞬間――彼は青ざめて叫んだ。
「何だよその掴み方!!」
その瞬間は何が何だか分からなくて。
叫ぶ彼を見つめることしかできず。
「そんな! パンへの触れ方! 信じられない! 最悪だ! しかも、そんなことをしていて女性だなんて、もっと酷い! 信じられないあぁ信じられないよ!」
ぽかんとしていると。
「そんな掴み方、好きじゃない! 最悪だ! よって……君と婚約は破棄とする!!」
いやいや、本気か? それが婚約破棄の理由? パンの掴み方が理由だなんて、正気か? 大丈夫なのか?
「食事は終わりだ! ……もう出ていってくれ。そして、二度とその顔を見せるな。お前みたいな女の顔、もう一生見たくない」
こうして私は急に追い出されることとなった。
一体何が起きたの……?
そんな思いを抱えたまま、私は彼の前から去った。
私は親から礼儀についてそこそこ習ってきた。それゆえ、失礼な行いをしていたはずはない。それに、パンの掴み方だけで婚約破棄されるなんて、ますます意味が分からない。もっと大きな何かがあったならまだしも。
ま、でも、過ぎたことをどうこう言っても意味はない。
これからは未来を見据えようと思う。
◆
その後私はとある屋敷で働き始めた。で、そこで能力を認められて。紹介の形で、城で働くこととなった。そして、そこでも働きを認められたことで王子の妻候補になった。で、数年候補として過ごした後に、王子と正式に婚約した。そして、やがて、彼と結婚した。
王子は善良な人だった。
だから私のことも大切にしてくれた。
彼と巡り会えたこと、とても嬉しく思う。
せっかくこうなれたのだ。
お返しとして、私は、彼のために生きてゆきたい。
◆
それからも私は王子の妻として生活していたのだが、その中で、オーガレニアのその後について耳にする機会があった。
彼はあの後顔が好きな女性と結婚したそうだ。しかし、女性の親と同居することになり、しかも女性の親から嫌われてしまったそうで。それからずっと、女性の両親から虐められることとなってしまったそうだ。で、今ではかなり心を病んで痩せていて。もうずっと体調不良が続いているらしい。
◆終わり◆




