愛してる、なんて、嘘だったのですね。~裏切り者の婚約者に今日婚約破棄されました~
私の婚約者であるエッカルトはいつも私に対して愛していると言ってくれていた。変に純粋だった私はそれを疑いもせず信じて。心は共にあるものなのだと、当たり前のように信じていた。そして、彼と共に行けば幸せになれるのだと、そう思っていた。
だが違った。
エッカルトは私を真の意味で愛してはいなかったのだ。
彼が他の女性と歩いているところを見てしまった私は、失礼にならない程度の言い方ではあるものの、そのことについて彼に事情を聞こうとした。すると彼は責められたと感じたようで怒り出してしまって。
「うるさいな! そんな女、もう要らないよ! こうなったら……君との婚約は破棄だ!」
そう告げられてしまった。
責めたつもりはなかった。
ただ話を聞こうとしただけのつもりだった。
でも理解してもらえず。
私は彼を責めたことになってしまい、さらに、婚約破棄されてしまった。
どうして……。
そもそも、彼が他の女性と楽しそうに一緒にいたことが原因ではないか。なのに婚約破棄だなんて。まるで私が悪いかのような言い方をして。なぜそこまで私だけに責任を押し付けられるのか。
段々不愉快に思えてきて、気づけば、エッカルトへの良い感情は消え去っていた。
◆
婚約破棄後、私は親からも許可を得て旅をしていた。で、その際に列車事故に巻き込まれてしまい、不運かと思ったのだが。いや、もちろん、事故は不運だったのだけれど。ただ、その時に同じ号車に乗っていた一人の男性を助けたことで王子と知り合いになることができた。
そして私は王子との縁を得て、やがて彼と結ばれることとなる。
「大変な状況でも他者を助けようと努力するその心に惚れたんです。これからも一緒にいてください」
結ばれる日、彼はそう言ってくれた。
◆
それから数年、私は王子と共に生き幸せになった一方で、エッカルトはというと恋人の手作り料理を食べたことで亡くなったようだ。
彼には愛する恋人がいたのだそうだが、彼女の手作り料理を食べたところ急に泡をふいて倒れ、そのまま眠るように亡くなったらしい。で、その後、手作り料理に毒が入っていたことが発覚したそう。
拘束後、犯人である女性は「私の手作り料理で殺めることで、彼を永遠のものにし、いつまでも共にいられるようにしたかった」と悪気はなかったように語っていたそうだが、そんな彼女も今ではもう処刑されていてこの世にはいないらしい。
◆終わり◆




