ある日突然婚約破棄されました。が、だからといって大人しく萎れてはいられません! きっと、いや、絶対に、幸せになってみせます。
私にはオリベンという婚約者がいた。
彼は私より五つ年上。
多少年齢差はあるものの関係は悪くなかった。
だが。
「悪いけど、君との婚約は破棄とさせてもらうことにしたよ」
その日、呼び出されて彼の家へ行ってみたところ、真面目な顔つきでそのようなことを言われてしまった。
「え……あ、あの……どうして……?」
「君との関係はもう終わりにしようと思ったんだ。純粋に、それだけの理由だよ。他の誰かが何か言ったとか、そんな話ではないんだ。僕が決めたことなんだよ」
「な、何か、やらかしてしまったのでしょうか……私は……」
「べつに。そういうわけでもないよ。ただ、君と生涯を共にするのはちょっと無理そうかな、と思って。あくまでこちらの心の、気分の、問題だよ」
「そんな……」
「じゃ、そういうことで。さよなら」
こうして私は婚約破棄された。
具体的な理由を聞き出すことはできなかった。
だが、オリベンとは終わりになってしまった、ということは事実だ。
そのことに関してあれこれ言っても意味はない。
そんな行為は何も生まない。
ならば未来のことを考えよう、そう思って。
私は萎れず前を向くことを選んだ。
きっと幸せになってみせよう。
その日の空は青く澄んでいて、日射しは温かく、吹き抜けてゆく風は爽やかだった。
◆
それから私は、実家で趣味の園芸に打ち込みつつ、結婚相手を探した。そうして生活していたある日、歴史ある領地持ちの家から連絡があって。連絡の内容は、うちの息子はどうだろうか、というようなものであった。そこで一度会ってみることになる。
そうして私はエッザと出会った。
彼はとても楽しい人で。
色々笑わせてくれた。
距離はあっという間に縮まり、私は彼と生きてゆくことを決心した。
こうして私はエッザと結婚。
祝福もされ。
幸せな花嫁になれた。
◆
あれから二年が経ったけれど、私は今もエッザと共に幸せに暮らせている。
彼は誠実でとても良い人。けれどもその家族ももっと素晴らしい。彼の父親は寛容な心の持ち主だし、彼の母親も美女だが性格も良いという非の打ち所のない女性であった。そして、両者共に、私に対しても温かく接してくれる。心ないことを言ったりしたりは絶対にしないし、息子の嫁でしかない私のことも家族のように大事に扱ってくれるのだ。
そういえば。
これは自分の親から聞いたのだが。
オリベンはあの後とある宴会にて出会った女性と親しくなったそうだが、彼女の影響でギャンブルを始めてはまってしまい、持っていた資産の九割以上をギャンブルで使い果たすこととなってしまったそうだ。
また、そのことで親と喧嘩になったらしく、親からも縁を切られて。
女性にも金がなくなったために捨てられて。
今、オリベンの近くには、誰もいないそうだ。
◆終わり◆




