本当に愛せる運命の人を見つけたから、と、婚約破棄されました。~彼はその後捨てられたようです~
その日、私は告げられた。
「俺、本当に愛せる運命の人を見つけたから、お前との婚約は破棄することにした」
私の婚約者であった彼オーデリーは女性をわざわざ連れてきて婚約破棄を告げてきたのだ。
「そういうことだから、これで」
「待って! ……本気で言っているの?」
「何だよその言い方。嘘に聞こえるのか? 俺が嘘つきだって、暗に言ってんのか!?」
「いいえ、そうじゃないわ。ただ、本気なのかと聞いているの。だって、貴方がこの婚約を破棄したら、貴方のお父様の借金返済をうちが行うというあの話は消えるのよ? それでいいの? お父様とは話し合ったの?」
すると、オーデリーは、急に大声を出す。
「うるさい!!」
歯を剥き出しにして叫ぶ。
「うるさい!! そのような嘘を!! 俺や俺の親を嘘で貶めるな!!」
もしかして、そのことは女性には秘密にしていたの?
だとしたら言わない方が良かったか……。
いや、でも、女性が騙されるのもそれはそれで問題だから一応ここで明かしておいて良かった気も……。
「と、とにかく! 俺はこれからは彼女と幸せに生きる! 邪魔はするなよ!」
こうしてオーデリーは逃げるように去っていったのだった。
◆
数ヶ月後、私は実家で暮らしているのだが、オーデリーが女性に捨てられたらしいという話を聞いた。
何でも、私と話したあの日に父の借金の話が女性にばれてしまったらしく、オーデリーは激怒されることとなったそうだ。で、「大事なことを黙っているような人とはやっていけない!」と言われ、切り捨てられたそうだ。
どうやら彼はあの女性と結ばれて幸せになることはできなかったようである。
だが私には無関係。
もう縁は切れたのだから。
彼がどうなったとしても私に被害はない。
◆
あれから五年、私は今、金を掘り当てたことで大金持ちになった男性と結婚している。
夫は子どもの頃から山で働いていたらしい。家庭環境もあって、鉱物を掘ることにも慣れ親しんでいたようだ。で、ある時金の塊が埋まっている場所を発見してしまったそうで。それまでは一般的な階級だったが、その時を境に彼は大金持ちとなることとなったそうだ。
そんな彼は、今、私の夫なのである。
彼はいつも家事を手伝ってくれる。
細かいところにも気がつくし配慮もできる良い人だと思っている。
ちなみにオーデリーはというと、あの失恋以来心を病んでしまったそうで、今も実家に身をおいているうえ自室にこもりきりのような状態だそうだ。一番熱心に世話をしている母親さえ、彼の姿を目にするのは半年に一度くらいなのだそうだ。
また、オーデリーは情緒不安定であり、二日に一度くらいのペースで自室内にて暴れ回るらしい。
それゆえ、一週間に一回くらいは壁が破れるのだそう。
その修復にかなりお金がかかって大変らしい。
◆終わり◆




