昔から私に嫌なことばかりしてきていた妹が婚約者を奪いました。良いでしょう、ならば私は貴女が悔しがるくらいの相手と結ばれます。
私には二つ年下のルーナという妹がいる。
彼女のことは好きでない。
なぜなら彼女は私に嫌なことばかりしてくるからだ。
子どもの頃からルーナの嘘によって私は多々悪者にされてきた。親は私のことをいつも理不尽に叱ったし、妹と違って悪いことばかりすると私の悪口を知人に話していたこともある。酷い親だ、ルーナの嘘に乗せられて長女の悪口を言いふらすなんて。
と、まぁ、そんな事情があって、私は妹が嫌いなのである。
◆
そんなある日。
「お姉さま! ちょっといいかしら!」
ルーナが機嫌良さそうにやって来たので「ああこれはまた何か嫌なことが起きるやつか」と思って内心溜め息をついていると。
「今日はね! お姉さまの婚約者のオッブレ様も来てくださってるの!」
「え。……オッブレ、どうして」
ルーナの後ろから現れたのは私の婚約者であるオッブレ。
既に嫌な予感しかしない……。
これはアレを告げられるのでは……。
そう思っていると。
「実は、僕、君との婚約を破棄することにしたんだ」
やはりそうだった。
予想は当たっていた。
「そんな、どうして」
「僕、妹さんを、ルーナさんを好きになってしまったんだ。だから……ごめん、さよなら」
オッブレは私を切り捨てた。
それを近くで見ているルーナは誇らしげに鼻を鳴らしていた。
「ま、そういうことよ! じゃあね! だっさいお姉さま!」
……負けない。
こうなったら、オッブレは諦める。
でも仕返ししてやる。
妹が悔しがるくらいの相手に出会って結婚してやろう。
◆
その後私はいろんな人脈を使って上手くやり、この国の王子である三つ年上の男性と婚約することに成功した。
「そういうことだから、これからは城で暮らすわ」
「あ……あ……」
「ね、ルーナ、お互い幸せになりましょうね」
「あ……ゆ、許せない許せない許せない許せない許せない! どうしてお姉さまなのよ! どうしてお姉さまが王子と婚約なんてできるのよ! だっさいのにごみなのに女の搾りかすなのに! こんな可愛い妹がいるのにださい姉が王子と結ばれるなんておかしいわ!」
やはりルーナは悔しがった。
「何かの間違いよ! だっさい姉が王子と結ばれて、可愛くて最高級女性なあたしがあんなオッブレとかいう中級男と結ばれる!? あんなちょっとましなごみ程度の男と!? 何よそれ! ないないないない! 何かの間違いだわ! 間違い! そうでなければおかしいもの! あたしにはもっと偉大な人が相応しいのよ! そうでしょ? そうなのよ! おかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
ちなみに、これは録音してある。
その後私はこの時の録音データをオッブレに手渡した。
するとルーナは婚約破棄された。
それはそうだろう、オッブレを悪く言っていたのだから。
こうして、私は王子と幸せになり、妹ルーナは一人寂しく生きてゆくこととなった。
◆終わり◆




