他の女のところへ行った元婚約者の彼とその相手である女を許すことはできませんので、二人を連れ戻し罰を与えます!
この国の王女である私はエルブリーズという男性と婚約し結婚の日を待っていた。
だが。
あと二ヶ月ほどで夫婦になる、という頃に、エルブリーズは一人の女と共に消息を絶った。
残されたのは、婚約破棄を宣言する書き置きだけであった。
納得できると思うか? そんな紙切れだけで。まさか。あり得ない、そんなことは考えられない。せめてきちんと言葉で告げられたのならまだしも分かるが、紙だけで婚約破棄? きちんとした契約なのに? 論外。一般人同士ならまだそれでも認められるのかもしれないけれど。王女である私と婚約しておいた、書き置きだけで婚約破棄? あり得ないだろう!
腹を立てた私は、エルブリーズの行方を追うことにした。
で、その結果、彼は一人の女性と共に遠い街へ行っていたことが発覚。
エルブリーズは女性もろとも拘束され、王城へ戻されることとなる。
「驚いたわ、急にいなくなるなんてね。エルブリーズ」
「…………」
「しかも。女性と一緒だなんて、さらに驚き。まぁ……二人の関係は何となく想像できるけれど」
私は彼を許さない。
勝手に姿を消すような者を許すことはできない。
「ま。あとは牢でね」
こうして、エルブリーズと彼と一緒にいた女性は、それぞれ牢へ入れられることとなった。
もちろん別室だ。
二人に共にいる権利などないのだから。
それから、まずは、女性が処刑されることとなった。
王女の婚約者をたぶらかした――その罪は小さな罪ではない。この国の未来に関わることだから。この国の大切な部分を壊そうとしたも同然――そんな罪な命はこの国に存在させておくわけにはいかないのだ。
女性は「私の中にはエルブリーズの子がいるのよ!」と主張し、子が腹にいるということを利用して生き延びようとしたが、主張によって対応が変わることはなく、そのまま処刑された。
それを見たエルブリーズは何度も吐いていた。
それから、エルブリーズは、国王からの説教を百時間にわたって受けることとなる。
彼は虚ろな目をしていて。
話なんてとてもまともには聞けないような精神状態であった。
その説教が終わると、彼もまた、処刑された。
ただし、二人の骨は同じ場所へは置かず。
エルブリーズのものは国内のまともな墓地へ入れられたが、女性のものは王都から遠く離れた十年ほど前までごみ置き場だった場所に埋められた。
ちなみに私はというと。
エルブリーズと結ばれるのは無理になったので、親が認めた人の中から数名と会ってみて、結婚する相手を決めた。
おっとりした餅のような彼とはとても気が合って。
今も毎日穏やかに楽しく過ごせている。
◆終わり◆




