失礼な言葉をたくさん並べてからお茶をかけて婚約破棄を告げた彼は処刑されました。~酷い人にはお別れを、さようなら~
「君ってさぁー、前から思ってたんだけどさぁー、ちょっとダサくない?」
婚約者エルベが急にそんなことを言ってくる。
ここは彼の家。
今日彼と一緒にいる理由は彼から茶会をしないかと誘われたから。
「え?」
「そーういうとこ! 何回も言わせるとかさぁー、センスなさすぎ。こんな簡単な文章も一回で理解できないとか、ちょっと脳やらかしてるよなぁー」
いやいや、いきなりそんな失礼なことを言われたら誰だって困惑するだろう。
脳やらかしてる、とか、敢えてそういう表現を使うところもいやらしい。
「君はまぁさぁー、中くらいには可愛いからまぁいいかーって思ってたけど、さ。やっぱ無理だわ。容姿はまぁぎりせーふでもなぁー、その内容の脳じゃ脳がきついわ。やっぱさぁー、俺の相手なら、もっと聡明の極みでないとなぁー」
言ってから、彼は手にしていたティーカップを急に投げつけてきた。
お茶がかかった。
服に赤茶のしみができる。
「婚約、破棄な」
いきなりお茶をかけられたうえ、婚約破棄を告げられた。
どうして? どうしてこんなことをされなくてはならないの? ……とても理解できない。こちらは何もしていないのに、彼を貶めるようなことはしていないのに、ただ一緒に茶会をしようという話に乗っただけだったのに。なのになぜ? どうして、散々悪口をかけられて、さらに茶までかけられなくてはならないの? しかも、お茶だって茶葉を使っているのだから、まともな理由がないなら大事に飲まなくてはならないというものではないのか? どうして、せっかくのお茶を、他者にかけるために消費するの?
「はよ消えろや」
◆
その後、エルベは、激怒した私の父の知り合いによって拘束された。
我が父には警備隊の知り合いが多くいる。
それゆえ人一人を拘束するくらいどうということはない、容易いことなのだ。
拘束された彼は「俺は何もしてねぇ!」とか「何もしてねーただの一般人を拘束とかいかれてやがる!」とか「あぼるるねるれおろろすとれすとれれろのめろろくろあぼるるる」とか大声でわめいていたそうだが、警備隊員に噛み付こうとして歯を折られた後、処刑されたそうだ。
申し訳ないけれど――可哀想とは思わなかった。
◆
こうしてエルベの最期を見届けた私は、それから数年実家の庭で趣味がてら作物を育てた後に、領地持ちの家の子息である青年と結婚した。
彼は野菜好きだったので、いつも、何の文句も言わずに私が育てた野菜を美味しい美味しいと喜んで食べてくれる。
◆終わり◆




