婚約者である王子との関係を邪魔しようとしてきた妹、あまりよろしくない家の出の恋人と共に自滅しました。
私には婚約者がいる。
名はエリオス。
彼は気さくで善良な人物だが、この国の王子である。
彼と婚約したのは数ヶ月前。急に熱を出した妹の代わりに参加したとあるパーティーにて彼に見初められ、婚約することとなった。
そのことを妹に明かすとかなり酷い言葉をかけられたけれど。
もう関わることもないから、と思い、ぼろくそに言われるのも無視して家を出た。
で、それ以降、実家へは戻らず王子の傍で生活している。
だが最近、妹が私を王子の妻にしないための抗議活動をしているそうで、あまりよろしくない家の出である恋人と共に組織を作って、やりたい放題して暴れているそうで。結構過激なことをすることもあって、被害が出ているそうだ。
「皆、困っているんだ」
「すみません……」
「だから、申し訳ないのだけれど、妹さんを拘束してもいいかな?」
「ええ。実は、私も、あの妹にはずっと困らされてきたのです」
この言葉は偽りのものではない。
事実、私はずっと、彼女に迷惑をかけられてきた。
妹のおかしな恋人の前に出されて殴られたことだってある。
確かあれは、妹が婚約破棄を告げたことで激昂した男の前に私が出されて、強制的に人の盾とされたのだった気がする。
何もしていないのに知らない男に殴られた……。
彼女がいる限り安心はできない。
それもまた事実だ。
悪いことと分かってはいても、どうしても、消えてほしいと思ってしまう部分もある。
「ありがとう。じゃ、拘束するかもしれない」
「良いのです。むしろありがとうと言いたいくらいで。手を打ってくださるなら感謝しかありません」
「大丈夫だよ、君は悪くないから」
「ありがとうございます……」
その後、抗議活動という名の暴れる活動を行っていたところ、妹とその恋人は拘束されたそうだ。
「ということなんで、もしかしたらどうにかなるかもしれない」
「どうにか?」
「処罰されるかも、ってことだよ」
処罰、か。
まぁ何でもいい。
どうにでもなってくれ。
むしろ、厳しい罰を受けてほしいくらいである。
「そうですか。承知しました」
「冷静だね?」
「はい。だって……妹と言っても、彼女は、私にとっては悪魔みたいなものでしたから」
「……そっか、分かったよ」
その後、二人は、二年間の拷問刑と死刑を合わせた最高刑を言いわたされた。
◆
そして二年後。
「今日、妹さんとあの男の処刑が完了したよ」
「あぁ……今日だったのですね」
私は既に第一子を生んだ。
今は赤子を抱いている。
「……ありがとう、貴方。愛しています」
私は笑顔で礼を述べる。
もう妹に何かされることはない。酷い目に遭わされることもない。そう思うだけで自然と笑みが込み上げてくる。たとえそれが家族の死であるとしても。それでも喜びの情は生まれるのだ。妹に嫌なことをされた日々があったからこそのこの灰色の喜びである。
「これからも、どうぞ、よろしくお願いします」
「改まってるね!?」
「変ですか?」
「い、いや。ううん、そんなことは。ただ、もっと気さくに関わってほしいかな……そろそろ?」
王子は照れくさそうに頭をぽりぽり掻いていた。
「ふふ。そう言っていただけるととても嬉しいです」
◆終わり◆




