本当は君を愛したいんだけど……、って、それ嘘ですよね? 一応言っているだけですよね? まるばれですよ
「本当は君を愛したいんだけど……無理なんだ、だから、君との婚約は破棄とするよ」
その日、私は急にそう宣言されてしまった。
「婚約破棄……?」
さすがにすぐには理解できず。
暫し困惑した顔をすることしかできなかった。
何を言っているの?
そんな風に思ってしまって。
「あぁそうだよ」
「そんな。あの、なぜですか? 急過ぎやしませんか」
「しつこいよ!」
「え」
「婚約破棄って言ったら婚約破棄なんだよ! もういいよ! 今大嫌いになった! 出ていってよ!」
婚約者オブルレンは急に怒り出し、私を家から追い出した。
まぁ、何となく……何となく、察してしまった。
本当は君を愛したいんだけど、なんて、嘘なのだろう。最初からそれは偽りで。本当のことを話す気はなかったのだろう。
こうして、私とオブルレンの関係は終わりを迎えた。
◆
その後私は数年間実家で暮らし、その間に見つけた気が合う相手と結婚することとなった。
金色の短髪に青い瞳を持つ整った容姿の青年で、いかにも女性受けしそうな外見にもかかわらず女性との関わりに慣れていなくて初々しい――そんなところに惹かれたのだ。
女性に慣れていないとか嘘に決まってるでしょ! とか友人から言われることもあったけれど、彼の言葉は嘘であるようには聞こえなかった。
――で、結婚から三年が経ったけれど。
彼との幸せな夫婦生活は今も続いている。
もうすぐ第一子が生まれる。また変わってゆく部分もあることはあるだろうけれど。でも、子が生まれてくれたなら、喜びだって増えるはず。苦労もあるだろうけれど、楽しみも発生するはずだ。
ちなみにオブルレンはというと、あの後すぐにやたらと鼻血が出る謎の病気にかかってしまったらしい。で、一時間に十回くらい大量に鼻血が出るようになり、残念ながら結婚どころではなくなってしまったそうだ。
◆終わり◆




