魔法少女はその姿を知った婚約者に婚約破棄される。~ならばもう貴方のことは護りません~
サラ・ステオレッド、一見平凡な令嬢のように見える彼女だが――実は彼女には秘密がある。
彼女は実は魔法少女なのだ。
魔法少女とは、人に知られぬまま悪と戦い続ける仕事。一定の年代の女性のみが就ける職である。選ばれてその職に就くこととなった者は、魔法を使い、人でない敵と戦い続けなくてはならない。そして、その運命から逃れることはできないのだ。
そういう事情があるサラは、表向きは婚約者もいる普通の令嬢として生きながらも裏では戦っていた。
だが、ある日、婚約者エルベルスに魔法少女であることを知られてしまう。
「まさか……お前が魔法少女だったとはな……」
「すみません。このことは明かせない決まりなのです。だから今まで言えませんでした」
「嘘つきが! 俺に対して隠し事をするとは! ……ったく、最低な女だな。ここまで最低な女とは思わなかったわ、はぁー、あーあ、がっかり」
「すみません! しかし! 仕方がなかったのです!」
「うるせえ!! 嘘ついたのは事実だろうがよ!! てめぇとの婚約なんぞ破棄だ!! 二度と近づくな、魔女め!!」
こうしてサラは切り捨てられた。
◆
その後、エルベルスが悪に襲われているところをサラが見かけるという機会があったのだが。
「さ、サラ! ちょうどよかった! 助けてくれ! お願い、襲われているんだ、頼む……頼む! その力で助け――ぎゃああああああああああ!!」
サラはエルベルスを護らなかった。
エルベルスは悪に滅ぼされ。
魂ごとその場で食べられて生を終えた。
サラはこれまで人を見捨てるようなことはしてこなかったけれど――かつて己を強く批判し切り捨てたエルベルスを救うほど優しくもなかった。
◆
それから数十年が経ち、サラもついに魔法少女を引退。
エルベルスに捨てられた数年後に出会って結婚した夫やその間の子らに囲まれ、今の彼女は穏やかに暮らしている。
都会からは少し離れた自然の残った地域にて、自然の匂いと優しい風に包まれながら、大事な夫を支える主婦として生活している。
◆終わり◆




