臭そうな顔面しやがってとか言われ婚約破棄されましたので、心ない彼とは速やかに離れて私は私の道を行きます。
「お前さ、ほーんと、臭そうな顔面してるよな」
婚約者オルレイグは私を自宅へ呼び出してそんなことを言ってきた。
はい? という感じだ。臭そうな顔面、とは。何だそれは、という感じ。臭い、というならまだ分かるけれど、臭そう、とは? そう、なところが、より一層意味不明である。
もちろん、他の人から臭いと言われたことはないし、親や信頼できる友人からも注意されたことはない。
「臭そうな顔面しやがって。ってことで、俺には相応しくない。だから、婚約破棄な」
彼はさらりとそのようなことを言った。
いきなりだなぁ……。
しかも理由も臭そうな顔面とかで滅茶苦茶だし……。
だが、そのような酷いことを言ってくる人といつまでも付き合う気はない。
だってそうだろう?
そんな人と一緒にいても幸せになれるはずもない。
ならば今のうちに離れておく方が良いかもしれない。
せっかくの機会。
心ない彼とは離れよう。
「承知しました。では、これにて。……さようなら」
そう言って、私は彼の前から去った。
婚約が破棄となったことは残念だけれど、あそこまで言われたのだからこのような展開も仕方のないこと。
過ぎたことにこだわるのはやめよう。過去のことより未来のことを考える方がずっと良い。過去は変わらないが未来は今から作られる。ならば、たとえ不確定なものだとしても、未来について考える方が少しは意味があるだろう。
◆
それから数年、私はちょっとした縁から王族の男性と出会い、彼と結婚した。
彼は直の国王の息子ではない。
そのため王の座に就くことはないだろう。
けれども、そこそこ裕福だし家柄も良いものなので、私の親も大層喜んでくれていた。
それに、何よりも、彼は人格者だ。
彼は未来の国王を支えていくことを大切に考えている人。
けれども妻である私のことも乱雑には扱わず。
よそから来た私の立場についても常に考えて行動してくれている。
彼は配慮のできる大人だ。
だからこそ、彼といると幸せを感じられるのである。
そういえば。
オルレイグはあの後全身から腐敗臭がする病気にかかってしまったそうだ。
その臭いは凄まじいものだそうで。
今は施設の部屋に隔離されているそうだが、掃除に入った人が臭過ぎて気絶することが続いたために誰も掃除できず、彼は常に一人ぼっちらしい。
私に臭そうな顔面とか言った彼が逆に臭くなる病気にかかってしまったのだから、皮肉というか何というか。
◆終わり◆




