婚約破棄されましたが生まれつき備わっていた魔力を使って世界を統一するまでになりました。あの時小さなことにこだわらなくて良かったです。
「君は魔力を持っているそうだな! なぜ隠していた!」
急に怒ってくる婚約者オーレイン。
「あの……以前きちんとお伝えしたはずですが」
「はぁ? 聞いておらん! 嘘をつくな!」
「話すのと同時に書類もお渡ししましたよ」
「貰っていない! 嘘ばかり言うな!」
紛失、ではないだろうか?
もし持っていないのだとしたら。
でも大丈夫か?
重要書類を紛失したうえ貰っていないと言い張るなんて。
「しかし、そちらにお渡しした記録が残っています。それをお見せしましょうか? お渡しした記録は残っているのです」
「後からこっそり作ったのだろう!?」
「いえ。送信記録など勝手に変えられるものではありません」
「ぐっ……」
オーレインは歯ぎしりをしてから。
「ま、まぁいい! 君との婚約は破棄とする! 今日言いたかったのはこれだけだ!」
吐き捨てるように言い放った。
こうして、驚くほど呆気なく、私とオーレインの関係は終わった。
◆
その後私は誰かと結婚することはやめることにした。また同じようになったら嫌だ、と思ったから。
そこで、生まれつき持っていた才能を活かすべく、魔法を使って生きていくことにした。
冒険者になった。
何も分からないところからのスタートだったけれど。
でもやる気はあったし。
一歩ずつ頑張ろうと思って。
◆
その後私は世界を統一するところにまで至った。
この星に人類の歴史にして初となる統一国家が誕生。
私はその長となった。
ある意味人類の頂点に立ったとも言える。
けれど、べつに、人々を虐げる気はない。
長となる人が必要だったので、私が据えられただけである。
そういえば、私がこの世界の長となることが決まった日に、オーレインが急にやって来て「やり直そう!」とか「支えてやろう!」とか言ってきたのだけれど――まったくもって意味が分からなかったので断った。
だってそうだろう?
何を今さら。
どういうつもりで顔を晒しにきたのか?
恥ずかしくないのか?
一度はあんな勝手な理由で切り捨てておいて、やり直す? 支えてやる? ふざけないでほしい。いや、ふざけるのもほどほどにしてほしい。こちらは顔も見たくないような気分なのに。
◆
あれから数年、私は一人の青年と結婚し幸せになることができた。
一方、オーレインはというと。私を批判する行動をする組織を立ち上げて活動していたようだがその活動が過激になり過ぎて、街を破壊するような行為を繰り返したため、治安維持組織に拘束されたそうで。その後、暫し牢に入り、それから処刑されたそうだ。
◆終わり◆




