婚約破棄された令嬢は異種族の夫に愛される。
「君の顔なんて二度と見たくないよ! よって、婚約は破棄とするよ!」
ある晴れの爽やかな日、リーフィは婚約者アボガからそう告げられた。
リーフィは純粋な娘だ。だからこそアボガの言葉を聞いて傷ついた。彼女の中にはそんなことを言われるという発想はなかった、だからこそ驚き、そこに切り捨てられた悲しさも加わって、だからこそとても辛かったのだろう。
婚約破棄されたリーフィは落ち込んだ。
両親が「自殺しないか」と心配するほどに。
母親は常にリーフィについていた。彼女の不安定な心理状態を不安視していたからだ。何か間違いがあってはならない、だからこそ、母親はいつもリーフィを見守っていた。
それから数ヵ月が過ぎて。
リーフィは少しだけ元気を取り戻し、庭を散歩するようになった。
そんなある日のこと、リーフィは狼と人間が混じったような容姿の男性と知り合う。
「きみ、ぼくが怖くないの?」
「はい。怖くなどありません。むしろ……なぜそう思われるのか理解できません。あなたはとても優しそうな顔をしていますよ」
二人は友だちになった。
リーフィは狼人間フォルクと仲良くなった。
そして、ある時森の中で賊に襲われたところを彼に助けられたことで、その感情は急変することとなる。
やがて二人は結ばれる。
リーフィとフォルクは、種族は異なるが、正式に夫婦となった。
◆
結婚から五年、リーフィは今も、夫であるフォルクに愛されながら生きている。
二人は生まれた場所も環境も異なる。それどころか種族さえ同じでない。当然文化的な差もあり、お互い驚くこともあって。ただ、それでも、二人の関係が壊れることはなかった。互いに受け入れようと努力し互いを思いあっている、だから壁も乗り越えてくることができたのだ。
「今日で五年……だね」
「そうですね」
「これからも仲良くしてほしいんだ」
「ありがとう、嬉しいです」
ちなみにアボガはというと、今はもう生きていない。
数年前、彼が住んでいた街は獣人族の過激派に襲撃された。
人の村を襲った獣人族の者たちは、人の村にある食べ物をほぼすべて盗み、不要なものはすべて壊した。
で、アボガはというと、その事件の犠牲者となった。
自宅の崩壊に巻き込まれてしまったのだ。
◆終わり◆