婚約者からどうでもいい小説の執筆を強制されていましたが、王子に見初められたことで自由を得られることとなりました。
「いいか! 明日までに五万字! 仕上げておけよ!」
私は婚約者エドベスに監禁されている。
そして小説を書かされている。
指定の文字数書き終えるまで自由は一切なく、その指定の文字数というのがかなり多いため、何だかんだで結局自由時間はほとんどない。
これがまだ興味のある内容の小説であれば良いのだが……書かされているのは彼が好きな内容のもの、私はまったく興味がなくどうでもいい内容なので、余計に辛い。
だが、そんなある日、一日だけ自由が許される日がやって来た。
「今日は買い物に行く。ついてこい」
「……はい」
こうしてかなり久々に外へ出られた私だったが、買い物のため出掛けた王都にてお忍びで街へ出てきていた王子と出会い、彼に見初められた。
「そういうことなので、悪いけれど、彼女は僕が貰いますね」
「ま、待て! 何という勝手なことを! 俺たちは婚約者同士なのだぞ!?」
「……金が目的ですか? 金ならあげますよ」
そう言って、王子は袋に入った現金をエドベスに渡す。
「これで、貴方とこちらの女性の婚約は破棄です」
「何を勝手なことを……」
「そのお金を受け取ったということはすべて受け入れたということですよ。では」
こうして私は、エドベスと離れられることとなり、さらに王子のところへ行けることとなった。
その後王子にエドベスから執筆を強制されていたことを話すと、彼は「そんな目に遭っていたなんて……でももう大丈夫、これからは自由ですよ」と言ってくれた。
以降、私はもう、誰にも縛られることはなかった。
王子と妻として生きてゆく。
それは自分でも納得していることだから苦痛ではない。
あとは自由だ。
エドベスといたら絶対に手に入れられなかったもの。
私はそれを手に入れた。
ちなみにエドベスはというと、私の次の婚約者も監禁していたそうで、その途中で監禁していることがばれてしまったために逮捕されたそうだ。
今は評価も普通の暮らしもすべてを失っているらしい。
でも、彼の場合だけは同情しないし、正直「少しはそういう経験をしてみればいい」とも思ってしまう。
私の時間を理不尽に奪ったのだから。
監禁して言いなりにしてきたのだから。
彼だって、一度くらい、自由のない生活をすればいいのだ。
◆終わり◆




