婚約者が勝手な都合で一方的に婚約破棄してきたので、彼が脱税していることを明かしてやりました。
「今日はお前に伝えなくてはならないことがある」
その日、私は、婚約者である彼オーガニゼーに呼び出された。
彼の自宅はそこそこ立派な二階建ての屋敷だ。以前聞いた話によれば父親のこだわりが強いためだそうだが、装飾も凝っていて、豪華という言葉が似あうような家となっている。
ただ、彼も父親も、ちょっとやらかしているという話を聞いたことはあるけれど。
「お前との婚約だが、破棄とすることにした」
彼は私を真っ直ぐに見てからそう言った。
「婚約破棄……ということですか?」
「あぁそうだ」
「そうですか。しかし、また、どうしてこんな急に?」
「理由ならある。お前より遥かに素晴らしい女性と巡りあうことができたんだ。それが理由だ」
え、それは勝手過ぎない……?
そんな風に思ってしまった。
「ま、そういう正当な理由があるから。婚約破棄、理解してくれるよな? じゃ、そういうことで。さよなら」
いやいや、それは、正当な理由と言って良いような理由ではないだろう。内心突っ込みを入れつつも、その場で彼に対してそれを告げることはしなかった。そのようなことをしても意味がないと思ったからだ。
だが、このまま終わらせはしない。
彼には破滅してもらう。
そう――彼が脱税しているということを報告してやるのだ。
そうすればきっと彼は痛い目に遭うだろう。
もしそうなれば私との婚約が何とか維持されるよりもずっと良い。
ざまぁみろ、と、言ってやる。
◆
翌日、私は早速税金に関する窓口へ行って、オーガニゼーが脱税してきていたことを報告した。
そうして調査が開始され。
その結果、オーガニゼーもその父親も脱税していたことが発覚し、二人は罰を受けることとなった。
凄まじい額の罰金を課され、数ヶ月国のために指定された労働をすることを強制され、評判も下がる――あぁ、とても、すっきりした。
彼も愚かだ。
一時の感情で私を捨てなければこんなことにはならなかったというのに。
こうして私の復讐のようなものは終わった。
◆
あれから数年、私は今、広大な農地を持ち土地を貸しつつも農家のようなこともしている家の息子である男性と結婚し幸せに暮らしている。
私は農業の手伝いはしていないけれど。
それでも置いてもらえていて。
非常に恵まれた環境で生活できている。
彼の母親はとても優しい人なので、彼女にも大変お世話になっている。
私の未来は明るい――今は迷いなくそう思える。
◆終わり◆




