婚約破棄され落ち込んでいたら宇宙人に見初められ愛されることになりました。
「マリア・アボボガード! 貴様との婚約は本日をもって破棄とする!!」
その日、私は、婚約者アッズからそう宣言された。
正当な理由のない婚約破棄を告げておきながら勝ち誇ったような自信満々の顔つきでいるのが謎でしかない。
婚約破棄の何がそんなに楽しいのか?
一方的に切り捨てるのがそんなに嬉しいのか?
疑問は消えず、ただ、彼の前からは去るしかなかった。
それからしばらくは落ち込むことしかできなくて、食事さえまともにとれないような体調だった。彼と結ばれると信じていた自分に腹が立つ、けれど理不尽な切り捨て方をした彼にも腹が立つ。ただただ涙が止まらなかった。悔しさ、虚しさ、悲しさ、いろんなものが入り雑じった心を抱えたまま、私はしばらく自室で過ごした。
それから一ヶ月ほどが経ち、久々に家の外へ出た。
空は澄んでいる。
温かな日差しを地上へ注いでいる。
とても穏やかだ。
……と思っていると、突如、空の遥か彼方から何かが飛んでくる。
「え……?」
何か、は、明らかにこちらへ向かってきていた。
落下してくるような速度。
このままここにいては危険、本能的に感じ取り少し離れたところへ移動した。
◆
落下してきたのは乗り物だった。
そしてそこから出てきたのが、これまた驚き、宇宙人だ。
「マリアサン、アナタニアイタカッタノデス」
しかも、その宇宙人は、わざわざ探して発見した私に話しかけてきた。
「え……」
「ハルカジョウクウカラアナタヲミテ、ホレテシマイマシタ。トモニイキテクレマセンカ」
「あの、ちょっと……意味が」
「アナタニホレテシマッタノデス」
緑の顔とスライムを引き伸ばしたような四肢を持つ宇宙人はいきなりプロポーズしてくる。
「あの……いきなりそれは厳しいので、まずは友人からでも……大丈夫でしょうか」
取り敢えず提案してみる。
すると彼は大きく頷いた。
「モチロンデスヨ! ヨロシクオネガイシマス!」
こうして私は宇宙人と友人になった。
以外な出会いだが、案外悪くないかもしれない。
友人として暫し同じ時間を過ごした。
そして私は宇宙人の妻となった。
よく分からない生命体と結婚というのはあまり良く思われなくて、祝福してくれたのは母親だけだった。が、私はこの道を選んだことを後悔はしていない。できれば皆に祝福される結婚が良かったけれど、こうなってしまった以上仕方のないことだ。母親だけでも温かく祝ってくれた、まだ良い方である。
◆
宇宙人との結婚から二年。
私は今もこの地上で彼と二人生活している。
「ここに住むので本当に良かったの?」
「モトヨリコノホシニスムツモリダッタノデス。ガ、マリアサンニアエテカラ、モットコノホシデイキタクナリマシタ。イッショニイラレテサイコウデス」
「そう……なら良いけれど」
「マリアサンハナニモキニシナイデクダサイ、タダワラッテイルダケデモンダイナシデス」
ちなみにアッズはというと、宇宙人の家族が祝福として落としてくれた隕石にぶつかってしまって落命したそうだ。
◆終わり◆