私は彼を愛していました。しかし、そんなことは関係ないと言われ、あっさり婚約破棄されてしまいました。
私には二つ年上の婚約者がいる。
名はルレス。
彼と出会ったのは学園の卒業式。彼と私は年齢は異なっているが学年は同じで、それゆえ、卒業式も同じだったのだ。そこで知り合った私たちは互いに惹かれ合い、いつしか共に行く未来を想うようになった。
で、無事婚約できたのだけれど。
それから少しして、彼は急激にそっけなくなっていってしまった。
「急に悪かったな、呼び出して」
「いいえ。でも珍しいですね、貴方が私を呼び出すなんて」
「あぁそうだな。思えばここ最近会っていなかったな」
「驚きました」
「そうか。じゃ、もっと驚かせることになるかもな」
「え?」
「婚約さ、破棄、することにしたから」
ルレスは軽く笑みを浮かべながらさらりとそんなことを言った。
「え……そんな、どうして!?」
「お前と生きていくのは無理だなーって思ってさ」
「そんな! 私は貴女を愛しているのに!」
「知るか。そんなことは関係ない。婚約破棄はもう決まったことだ、お前の気持ちなんて関係ない」
こうして私は婚約破棄されてしまったのだった。
◆
婚約破棄されてからの日々は明るくなれなかった。心にはずっと雨が降っていた。毎日のように涙して。それこそ両親から死のうとしないか心配されていたくらいの状態であった。
けれども、ある時父親の紹介で一人の男性に会ったことで、人生が拓けてゆくこととなる。
父親が紹介してくれたのはアボルエントという男性。
彼は若者ながらも画家として大成している人で。
少々個性的な帽子を被っているのだが喋りのセンスがあって言葉を交わしていると楽しい人であった。
これはただの偏見だとは思うけれど……画家なのに喋りが上手というのが意外だった。
で、そんな彼に惹かれて。
私は何度か会っているうちにアボルエントに惚れていった。
で、めでたくアボルエントと結婚した。
少し前まではこんな未来は想像していなかった。ルレスと結ばれ生きていくのが当たり前だと思い込んでいたから。
でもこんな未来も悪くはなかったのかもしれない。
今はそう思える。
それだけの広い視野を持てている。
アボルエントの出会えて良かった。
今は迷いなくそう思えるのだ。
◆
こうして私はアボルエントと結ばれ幸せになれた。
一方、ルレスはというと、裏社会の人の女である女性に誠実さもない関わり方で関わってしまったために裏社会の人を怒らせてしまったらしく。誘拐されてぼこぼこにされたうえ一部の重要な内臓だけ抜かれた状態となり、行方不明になってから数ヶ月後に亡骸で発見されたそうだ。また、ルレスの父親も夜道で何者かに襲われ、死亡一歩手前のような状態になってしまったらしい。
◆終わり◆




