大嫌いな妹が婚約破棄されました。ざまぁ、いい気味だわ、と思ってしまいます。
「お姉様! あたくし、エルビー様と婚約することになりましたの!」
妹がそんなことを言ってきたのは今から二ヶ月ほど前。
彼女は前から憧れていたエルビーという男性と婚約することに成功した。
ただし、親の権力を使って、だけれど。
私は彼女が大嫌いだ。妹だけれど、それでも好きにはなれない。だって彼女は小さい頃からいつも私を虐めてきていた。しかも、少し都合が悪くなると可愛くぴーぴー泣いてすべてを私のせいにしてくるのだ。また、馬鹿な親たちはそれにまんまと乗せられ、私が悪者だと勘違いするから厄介だ。
「そうなの、おめでとうー」
「うっふふ! ありがとう! お姉様、羨ましいならそう言っても良いんですのよ? うっふふふ、冗談ですわっ」
そういった経緯もあり、彼女の婚約もそれほど純粋には祝福できなかった。
どうしてもこれまでの彼女の行いを思い出してしまって。
真っ直ぐに祝いの気持ちを抱くことはできなかった。
姉として祝福するべきと思ってはいてもどうしても無理だった。
もしこれが仲良しの姉妹だったとしたら、きっと、妹の幸せを共に喜べたと思う。
◆
そして今日。
毎日そうしていたようにエルビーのところへ遊びに行っていた妹が走りながら帰ってきた。
「お母様ぁ! お父様ぁ! あああああああああああぁぁぁぁぁぁん!!」
妹は号泣していた。顔全体を真っ赤にして。鼻も、目もとも、赤く染めて。涙やら何やら、あらゆる体液でぐちゃぐちゃにしながら、帰ってきたのだ。
何事かと思っていると。
「何があったんだ? 落ち着いて話してくれ」
「お父様ぁ! 婚約、破棄、されまぢでぇぇぇぇぇ!」
「え? え?」
「ぞうなんでずよぉぉぉぉぉ! じょっど他の男の人と一緒にいただげにゃのにぃぃぃぃぃぃぃ! びどいいいいいいい!!」
どうやらエルビーから婚約破棄を告げられたようだ。
「いやあぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁぁぁ」
その日妹は壊れてしまった。
だが、正直、妹がそうなっているのを見ても可哀想とは思わなかった。だってこれまで彼女にはいろんな形で傷つけられてきた、だから、一度くらい、彼女も同じ思いをすれば良い。そんな風に思ってしまうのである。それに、己の行動が原因になっている婚約破棄なだけまだ良いではないか。理不尽に切り捨てられるよりかはましだろう。
以降、妹は毎日のように号泣し自宅内で暴れるようになった。父親が必死になって止めることで何とか家じゅうを破壊されずに済んだけれど。とにかく妹の世話が大変になってしまって。両親は妹にかかりっきりになった。
そこで私は家から出ていくことにした。
親戚の家に住まわせてもらうことになったのだ。
◆
親戚の家で暮らし出した私は、その屋敷で働いていたところ一人の資産家の青年に出会い、彼に見初められて結ばれた。
今は妹にも両親にも絡まれず自由を謳歌できている。
理不尽に怒られることのない生活。
これは実にありがたい。
そして安心して暮らすことができる。
いつ何時絡まれるか分からない厄介な日々から逃れられ、今はとても幸せだ。
◆終わり◆




