誰にも必要とされなかった令嬢、死後に最強の力を手に入れる。
ニーナはなぜか誰にも必要とされなかった。
「あんたみたいなのろま、生まれてこなければ良かったのに!」
「俺の娘ならもっと優秀であるべきだろう!」
母と父が最初に彼女を傷つけた。
二人はおっとりしているところがあったニーナを嫌っていて、いつも傷つけるようなことを言った。そして、わざとそうしているかのように、妹ばかりを可愛がった。
「あなたってぇ~、ほーんと馬鹿ヅラしてるわよね! 泥でティータイムしてなさい!」
学園で初めて親しくなった同性の友だちは派閥を持つ高圧的な先輩に奪われた。
「あの……ごめんね? でも、わたしも、居場所が欲しいの。わたしはわたしが大事だから、ニーナちゃんとはもう無理。……じゃあね」
派閥に入ることを選んだ友だちはそこまで言った。
「お前みたいな女、だっせーわ。消えてくれや。婚約は破棄な」
婚約者からは失礼なことを言われたうえさらりと切り捨てられた。
「あの女ださすぎよね」
「早く出ていってほしいわ~、屋敷が腐るもの~」
婚約者の家で働く使用人たちは聞こえるように悪口を言ってばかりだった。
やがてニーナは生きることを諦める。
なぜならこの世に救いはないと気づいたから。
その夜、彼女は崖から飛び降りて、死んだ。
そしてニーナは手に入れた。
この世のすべてをひっくり返してしまうような強大な力を。
最強の力、それは、この世界の理をも書き換えられてしまうようなもの。
彼女はその力を使うことにした。
◆
まずニーナの両親に異変が起きた。
母はある日突然発狂。
何かがあってというわけではなく普通ではない精神状態になってしまい、驚いた夫によって自室に監禁されることとなる。
が、彼女は数日後急死していた。
その翌日、父が実は十年以上付き合っていた愛人が馬車の事故で亡くなる。
父は悲しみの滝壺に落ちた。
それからは一日中酒を飲み続けるようになり、急激に体調を悪くして倒れ、妹に見送られた。
妹は一人になったところを山賊に誘拐された。その後は山賊の活動拠点に置かれ、奴隷としていろんな意味で働かされている。
そして、学園時代にニーナに関わったことのある者たちは、なぜか次々に落命する。
学園の呪い。
後にそう呼ばれることとなるのは、また別の話。
それから数日が経った夕暮れ時、ニーナを切り捨てた元婚約者の家にどこからかやって来た隕石の欠片が大量に降り注ぐ。
家は全壊。
直前まで屋敷があった地点には大きなクレーターができる。
婚約破棄した本人、その親、そこで働く使用人たちは、その事故で全滅した。
◆終わり◆