緑の瞳が不気味だからと婚約破棄した婚約者の彼は残念なことになってしまったようです。
私の瞳の色は生まれつき他の人たちとは異なっている。
そう、私の瞳は緑色。まるで翡翠のような瞳だ。周りは大抵が茶色系統か少し青寄りの色だが、私だけはなぜか華やかな鉱物のような緑系の色なのだ。
婚約者アアはそれを良く思っておらず……。
「悪いが、お前との婚約は破棄ということにすることにした」
この日、私は、彼からそう告げられてしまった。
まさかの婚約破棄。
いや、本当は、薄々そうなりそうな気もしていたのだけれど……でも、それでも驚きはあった。
「お前のその緑の瞳は気味が悪い。まるで人間でないかのようで。よって、婚約は破棄とする! そういうことだ、いいな。ではこれにて。さらばだ」
こうして私はアアに捨てられたのだった。
ただ目の色が違うだけなのに、どうしてここまで悪いことをしたみたく言われなくてはならないのか……もやもやはしたけれど、深く考えすぎないように努めた。
だってそうだろう?
婚約はもう破棄された。
それは変わらない。
ならば、今さらあれこれ思考しても無駄ではないか。
◆
あれから三日、私のもとへ届いたのはアアの死に関する話だった。
私を捨てたあの日。
アアは自宅にいたところを獣に襲われて死亡したそうだ。
死因が死因ということもあり、亡骸はほとんど残っていなかったらしい。
◆
あの婚約破棄から二十年、私は今、愛してくれる人と出会い彼と共に生きている。子にも孫にも恵まれ、充実した日々。特殊な目の色の私でもこんな穏やかな日々を手に入れることができたのは、ひとえに、理解し守ってくれる人に、夫に出会えたからだ。
◆終わり◆




