婚約破棄などノーダメージです。残念でしたね。
「お前、ほんと可愛くねえな。ってことで、婚約は破棄することにしたから。じゃ! 消えてくれな! で、二度と俺の前に現れんなよ」
婚約者ブベルはある日突然そんなことを言ってきた。
なぜ急に?
しかも嫌みまで。
どうして?
そんな風に思いはしたけれど。
でも、彼への執着が強かったわけではないので、婚約破棄は受け入れることにした。
「分かりました」
「ふん! やっぱ可愛くねーよな!」
「では私はこれで」
「強がりか? もしそうなら、許してやる方法を教えてやってもいいんだぜ? 泣いて謝って土下座しろよ、そうすりゃ、まぁ許してやらないでもないんだぜ?」
どうやらブベルにはそういう性癖があるらしい。
しかしそのようなことをする気はない。
好きでもない人の性癖に付き合ってはいられない。
「土下座させたいだけ、ですよね?」
「はぁ? なーに言ってんだよ、クソが。ふざけたこと言いやがって。あーあー、せっかくチャンスやるって言ったのによ! もう怒った! 許してやるってのはなかったことな!」
「はい。ではこれで失礼します」
「あ? いいのかよ? 婚約破棄で。婚約破棄された女なんて二度と誰にも相手にされねーんだぞ?」
しつこいなぁ。
「私はこれで。婚約も破棄となったことですし、失礼致します」
もう彼と関わる気はない。
この辺でお別れといこう。
ということで、私はその場から去った。
◆
その後私はとあるパーティーで知り合った資産家の青年と結ばれ幸せになれた。
一方ブベルはというと、一方的に婚約破棄したという悪評が広まったことで女性から相手にされなくなり、求婚して拒否されるというようなことを十五人以上繰り返している状態らしい。
ブベル自身はそれでも折れず女性に求婚を続けているようだが、彼の母親は恥ずかし過ぎて体調を崩しているそうだ。
とはいえ、今や他人だ。
彼や彼の親がどうなろうが知ったこっちゃない。
◆終わり◆




