前妻の子であった私は義母義妹に虐げられていましたが、ある日城へ行ったことをきっかけに人生が変わりました。
前妻の子であることを理由に、私は、現在の母である義母とその娘である義妹エリサから虐げられている。
私は二人が現れた時も嫌な顔をしないでいた。それは、事故で妻を亡くした父に、どうにか明るく幸せに暮らしてほしかったからだ。私の存在によって父が不幸になるのは嫌だったし、私がいるからと父に人としての幸福を放棄させる気もなかった。
でも……そんな害のない私だったからこそ虐げられることになってしまったのかもしれない。
舐められたのだ。
たいしたことない娘だと。
当時私には婚約者がいたのだがその婚約も二人によって強制的に取り消されてしまった……もっとも、そんなものは始まりでしかなかったのだけれど。
ここは父と私の実母である前妻の家だというのに、今ではすっかり義母が頂点に君臨してしまっている。そのこともあって、父も、彼女の対して強くはでられず。それゆえ、父も私がされていることを知りながら見て見ぬふりをしている。
かつては父には幸せに生きてほしいと思っていたけれど、今は……正直もうそうは思えない。
見て見ぬふりをしている父だって私を虐めているようなものだ。
手を下していないだけでほぼ同罪である。
◆
だがある日、義母がこんなことを言ってきた。
「あんた、エリサが城へ行くから、世話役としてついていきな」
私は戸惑った。
彼女はずっとエリサと私を積極的に関わらせようとはしていなかったから。
何かの企みがあるとしか思えない……。
「何だい、その顔」
「あ、い、いえ。少し驚いてしまいまして」
「はぁ?」
「エリサさんに同行させていただけるとは思っていなかったもので……」
「ふん。何でもいいよ。ま、そういうことだから、行ってね。エリサをきちんと守るんだよ」
散々虐めておいて守れとは、なかなか画期的な発想である。
でもまぁ外出できるのなら悪くはないかもしれない。もうずっと屋敷の敷地内から出られていないから、外への憧れは確かにあるのだ。外へ行けるというのなら、どんな状況であれ、ある意味嬉しいことと言えるだろう。
こうして私はエリサについて城へ行くことにした。
◆
そうして向かった城にて、私は王子に見初められてしまった。
「君は素晴らしい! 世話役なんて惜しいよ、そんなの。ぜひ僕と共に生きてほしい!」
エリサが王子に見初められるための会だったというのに、彼女ではなく私が見初められてしまった。ということで、もちろんエリサには激怒されてしまった。でも、王子が「大丈夫、あの乳まる出しの妹さんからは僕が守るよ」と言ってくれたので、私は彼のもとへ行って生きることにした。
「事情もあっただろうに……勝手言ってごめんね」
「いえ」
「でも、とても嬉しいよ。どんな形であれ、君と出会えて良かった」
「こちらこそ嬉しいです。あの家にいても虐げられるだけだったので。救われました」
私は王子と結ばれた。
こうして私は幸せになれた。
もちろん、幸せの形は人それぞれだろうけれど、少なくとも私にとってはこの道が幸福な道だった。
ちなみに、義母とエリサと父は、私と王子の婚礼の日に会場に乱入しようとしたことで警備隊に拘束され牢屋に入れられた。
父は特に何も所持していなかったうえ抵抗もしなかったため、数時間の説教と罰金のみで解放されたそう。
しかし義母とエリサは刃物や爆発物を所持していたうえ暴言を吐き散らしさらに拘束時にも激しく抵抗したため、死刑となったそうだ。
◆終わり◆




