婚約破棄されましたが王妃になりました! ~こう見えて私強いんです~
私、見た目は普通の女性なのですが、実は一般的な女性の十倍以上の腕力を持って生まれました。
それゆえおかしな女と思われることも多くて。子どもの頃から友人やその親などから色々言われたり嫌われたりと残念な目に遭ってきました。人より苦労してきたのではないかなと思います。
けれども、そんな私にも婚約者ができました。
彼の名はルチエス。
凄まじい腕力のことを知っていてもなお婚約してくれた寛容な殿方です。
そんな彼のことを、私は大切に思っていました。
けれど……。
「悪いね、きみとの婚約は破棄するよ」
その日、私は突然、そう告げられてしまったのです。
「やっぱり、怪力女と結婚するのは無理だ。受け入れようと頑張ってきたが、どうしても、生理的に受け付けない。正直……無理、なんだ」
ショックでした。彼だけは私を受け入れてくれているものと思っていたから。まさか彼にもこの腕力のことを言われるとは思っていなくて。あれこれ言われることには慣れていても、信頼していた彼から言われるとダメージは小さくありませんでした。
「悪いな、じゃ、そういうことだから。さよなら」
私はその日から酷く落ち込みました。
彼に捨てられて悲しかった。
そしてこの腕力を憎みました。
これさえなければ……彼と一緒に生きられたのに……。
そんな風に思ってしまいました。
しかし、時が経つにつれて、悲しみが悔しさと怒りへと変わっていって。徐々に心の内の色は変化してゆき。次第にやけくそになり、武闘大会に出ることにしました。もちろん、ちょっとした発散のつもりで、優勝を狙う気なんてなかったのです。
けれども優勝してしまいました。
「信じられない……あの腕力……」
「スゲー! カッケー! やるなぁ!」
「強いわね」
「戦いの天才ねっ」
初めてこの腕力によって褒められた。
それが何より嬉しくて。
この道を歩んでいこうと心を決めました。
それから数ヶ月、この腕力に惚れ込んだ国王から求婚され、私はそれを受け入れることにしました。
「ぜひ、共に生きてほしい」
「はい。こちらこそ。よろしくお願いします」
「嬉しいでしゅ! ……あ、ああああ、すまない! すみませんすみませんすみません! うっかりぃ!」
「いえいえ」
「と、ととっ、とにかく、よろしく!」
こうして国王と結婚した私は王妃となりました。
これからはこの腕力でこの国を護っていきたい。
そんな風に思っています。
もちろん可能な範囲でですけれど。
今はありのままの私を受け入れてもらうことができてとても幸せです。
一方、かつて私を捨てたルチエスは、あの後恋人の女性と散歩していた際に山をくだってきた山賊に襲われて死亡したそうです。ちなみに、恋人の女性は殺されはしなかったものの、小屋に連れ帰られて悲惨な目に遭ったそうでした。
とはいえ、王妃となった私には無関係ですが。
◆終わり◆




