表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 2 (2022.3~12)  作者: 四季


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

470/1194

婚約破棄されましたが第三王子と結婚しました。一方元婚約者の彼はというと破滅しかない道を歩むこととなったようです。

 青い空を、白い鳥が飛んでゆく。


 どこまでも澄んだ空。

 絵画のように美しい風景。


 そんなとても素晴らしい朝のこと。


「おまえとの婚約さー、破棄さー、することにしたからさー」


 身体から納豆の匂いがする婚約者ルッルンからそんなことを告げられてしまった。


 彼は右手の太い幼虫のような指を鼻の穴に突っ込み鼻くそをほじる。


 婚約破棄という人生に関わるような話をしている時なのにその顔つきに真剣さはほぼなく、むしろ日頃以上にリラックスしているようにも見える。


 なぜ?

 どうしてそんなに気楽な感じなの?


 婚約破棄って、そんなのんびりまったり寛ぎながらする話じゃない。


 でも、彼にとってはたいしたことではないのかもしれない。私が真剣に受け取っているだけで。私の感覚と彼の感覚には大きな差があるのだとしたら、彼が鼻くそをとろうと鼻の穴をこじ開けながら話しているのもまったくもって理解できないということはない。婚約破棄というものが、彼にとってその程度なのなら。


「だからさー、今日でお別れってことだからさー、いいよなー」


 彼はとれた小指の爪くらいの大きさの鼻くそを食べた。


「そうですね、分かりました」

「じゃーなー」

「はい。さようなら」


 彼と生きてゆくのは無理。

 そう感じて。

 だから私は婚約破棄を大人しく受け入れることにした。



 ◆



 その後私は親友の親戚の紹介でとあるパーティーに参加し、そこで第三王子と出会い彼に気に入られて、やがて結ばれた。


 話が進む時というのは、不思議なもので、自分でも驚くくらいどんどん進んでゆくものだ。


 第三王子との結婚の件もそれだった。


 最初は王子相手にやっていく自信がなかったのだけれど、迷いながらも話はどんどん進んでいってしまっており、気づけば王子と結婚していた。


 でも、彼と生きてゆく道を選んだことを後悔はしていない。


 彼はいつも私を守ってくれる。

 城に入って侍女らから虐められそうになった私を救ってくれたのも、他の誰でもない、夫の彼だった。


 どんな時でも彼だけは味方でいてくれた。


「気になることや辛いことがあったら何でも言って」


 彼はいつもこんな風に声をかけてくれる。


「隠さなくていいし遠慮しなくていい。何かあったら取り敢えず話してよ、聞くから。きっとこれからも大変なことはあるだろうけど……一緒に乗り越えていこう。それが夫婦ってものだよ」


 私は彼の笑みが好きだ。


「ほら、僕も、君を支えるから」


 でも、本当は、私も彼を支えられる人になりたい。


 もっと強くなって。

 彼に何かあった時に共に戦える人でありたい。



 ◆



 数年後、私は、元婚約者のルッルンのその後について聞いた。


 彼は私と別れてすぐ出会った一人の女性の惚れ込んだらしい。で、彼女の影響できのこから作られたぎりぎり違法にならない薬物に手を出し、それから急激に体調を崩したそうだ。異様に騒ぐ時とあり得ないくらい落ち込む時、波が凄まじいことになったらしい。また、昼も夜もまともに眠れなくなったらしい。


 異変に気づいた親が女性と引き離した時には手遅れだった。


 ルッルンは今は薬物を抜くための施設に入っているそうだが、問題行動がかなり多く、施設の人たちからも「彼は行動が特に酷い状態ですね」と言われるほどだとか。


 もう薬を摂取していないにもかかわらず朝も昼も夜も暴れ回り、五時間以上壁を蹴り続けることもあるらしく。さらに、時には係員に対して「俺を消そうとしてくるやつは消す!」などと叫びながら襲いかかることもあるそうだ。


 このまま改善しないでいると、来年の年末には法に則って処刑される予定だそうだ。


 ま、もはや私には関係ないのだが。



◆終わり◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ