婚約破棄? どうぞご自由に。ただし、貴方には蛙になっていただきます!
低級ながら魔法使いの私。
悪いことはしていない。
私が魔法を使うのは基本的には人のためになる時だけ。
しかし婚約者ポンポトには理解されていない。
彼は私のことを『穢れた魔女』と呼ぶ。
そして、本当は婚約する気なんてなかったんだ、と繰り返す。
そんなことを言うなら最初から婚約しなければ良いのに……と思うのだけれど。
でも、愚痴を言いつつも婚約したというところが、彼の厄介としか言えない部分である。
◆
そんなある日。
「悪いなぁ急に」
「いえ」
「伝えたいことがあってな」
「何でしょう?」
「婚約、破棄することになったから」
来た!
ついにこの日がやって来た。
一種の嬉しさはある。
「婚約破棄、ですか」
「そうそう」
「理由は何かありますか?」
「ま、穢れた魔女と結ばれるのが嫌だったから、が第一だな」
それから、数時間にわたって、ポンポトは私を侮辱するような言葉を並べた。
さすがに耐えられない。
ごちゃごちゃ言われて流せるほど私は寛容ではない。
でも、ここで反撃したら、絶対問題になる……。
そこで、私は、ここではすぐには反撃しないことにした。
「ま、俺にはもーっと可愛い女性がいるしな! お前なんかどうでもいいんだよぉ。だっははは!」
「そうですか」
「はぁ? 何だそれ、生意気な物言いだなぁ。ふざけんなよぉ?」
「では私はこれで失礼しますね」
その日はそれで別れた。
◆
その後、私は魔法を使い、ポンポトを蛙に変えた。
数日後彼が蛙になった話を聞いた。
どうやら私の魔法は成功していたようだ。
で、蛙となったポンポトは、蛙嫌いな妹に箒で何度も叩かれ潰されたそうだ。
ふん、いい気味。
今回ばかりはそう思ってしまった。
他者の不幸を喜ぶなんて良くないことと分かってはいても、それでも、今回の彼に関してだけはざまぁみろと思った。
◆終わり◆




