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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 2 (2022.3~12)  作者: 四季


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はめられ聖女は他国へ行って活躍する。~その力は本物です~

 私の名はリッリ。

 国を護る聖女の血を引く女だ。


 実際、私には、かなり大きな魔力が秘められている。


 規模が規模なのでなかなか使うことはできないのだが……。


 前に一度実験で魔法を使った時には、驚いたことに、大きな山一つが一瞬にして吹き飛んだ。


 そんな私は、聖女として扱われ、アポ王国の王子アポンと婚約していた。


 しかし。


「君が聖女という話が嘘だと聞いた。そういうことなら、俺が君の相手をする必要もない。ということで、君との婚約は破棄とする!」


 アポンはある日突然そのようなことを宣言した。


 私は彼の命令で城から追い出されてしまう。


 魔力は偽りのものではないのに……。

 聖女の血を引くというのも国が正式に認定した事実なのに……。


 だが、その後一般人の噂話によって、アポンにとても可愛がっている女性がいることを知った。で、その女性が「私こそが本物の聖女よ、あの女は偽者」と語っていることも知る。


 恐らく、彼女がアポンに何かを吹き込んで、こんなことになったのだろう。


 事情は理解した。

 そういうことならどうでもいい。


 私は私の道を行くだけだ。


 こうして婚約うんぬんから逃れられた私は、この国にいてもひそひそ話をされるばかりで気まずいので他国へ出ることにした。



 ◆



 その後私は隣国へ引っ越して冒険者として働くことにした。


 戦闘の経験は皆無と言っても問題ない状態だが魔力だけは有り余っている。魔法さえ使いこなせれば少しは冒険者として働けるだろう。戦い慣れはしていなくとも、大きな力があれば何かはできるかもしれない。


 ◆



 結果、私はその国の王子の妻となった。


 ……いや、いきなりそんなことを言っては話が飛び過ぎか。


 順を追って話そう。


 冒険者として働き出した私は、高威力の魔法を使うことはできたのだが、やはり周囲に被害が出てしまって。いちいち大事になってしまった。


 その話を聞きつけた冒険者管理課に指示され、私は、国が管理している大型魔物討伐隊に入ることとなる。


 このような話が出てきた理由は、大型魔物討伐部隊なら人々の近くで戦わないため少しくらい周囲に被害を出しても問題ないから、というものであった。


 そこでは私のこの高威力の魔法が役に立った。


 私は部隊に加入して何匹もの大型魔物を討伐した。

 戦闘経験は少なめでも。

 高威力の魔法が使えることが最大の武器となってくれた。


 山をも吹き飛ばす威力だ、大型魔物だって倒せる。


 で、そこで働いている時に王子に目をつけられ、彼から求婚されることとなって。


 そうして気づけば彼の妻となっていた。


 単なる一人の戦闘員でしかない私には逃げる権利などなかった。


 だが、王子である彼の妻になって嫌だったかというとそんなことはなく。

 彼にはとても良くしてもらえたので、今は彼と結ばれて良かったと心の底から思えている。



 ◆



 私が国を離れて数年で、アポ王国は滅んだ。


 実際にこの目で見たわけではないけれど。

 情報が伝わってきたのである。


 なんでも、あの国は大型魔物の襲撃によって滅んだそうだ。


 アポ王族も、アポ王国軍も、聖女を名乗るアポンの妻も、巨大でかなり強い敵が相手では何もできず。


 あっという間に崩れ去ったそうだ。


 ちなみに。アポンとその妻は敵襲時に一番に国の外に逃げようとしたことで国民から激しく批判され、過激な国民に殴る蹴るの暴行を加えられたうえで殺められたそうだ。二人だけは、大型魔物に殺されたわけではないとの話である。


 今、かつてアポ王国があったあの地は焼け野原になっていて、人もほぼ住んでいないような状態らしい。


 私がアポ王国にいたなら……何か変えられたかもしれない。


 でもそれは考えても意味のないことだ。


 過ぎた時間は戻らないのだから。


 それに、私は捨てたのは彼らの方なのだから。


 私リッリはこれからも夫のいるこの国で生きてゆく。

 そしてこの国を護る。

 それが私の運命なのだと信じて。



◆終わり◆

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