本物の聖女である私を追放した国はあっという間に終わりを迎えてしまったようですが、私はもう無関係です。国のことなんて知りません。
「お前が偽りの聖女だったとは思わなかった」
「え?」
「彼女こそが! エリーエラこそが! 本物の聖女だったのだ!」
「ええ……」
私の婚約者でもある王子ブルノンはやたらと威勢よく言葉を放ってくる。
「ウソつきの聖女はこの国には要らん! よって、婚約は破棄とし、あわせてお前はこの国から追放する!」
こうして私はブルノンに切り捨てられた。
しかも国から追い出されて。
生まれ育った地で生きることさえ許されなくなってしまった。
私は取り敢えず隣国へ移住した。
もちろん、できることなら生まれ育った国で生きてゆくことを選びたかった。でもそうするしかなかったのだ。他国へ行くしかなかった。なぜなら、王子の権力で追い出されてしまったから。王子の権力を使われてしまってはさすがに抵抗できない。どうしようもなかった。
◆
あれから数ヶ月、ブルノンがいたあの国は滅んだ。
隣国から攻められたそうで。
あっという間に敗北。
ブルノンを含む王家の人々は処刑され、地は隣国に乗っ取られたそうだ。
ちなみに、ブルノンが聖女と言っていたエリーエラという女はブルノンのただの愛人だったようで、聖女ではなかったらしい。ということもあり、エリーエラは国を護ることはできなかったようだ。
ま、そうだろうとは思っていたけれど。
ブルノンは処刑されたが、エリーエラは敵軍に拘束されて遊びの女として使われることとなったそうだ。
ま、私には関係ないけれど。
一方、追放されたことで戦争に巻き込まれずに済んだ私は、移り住んだ先の国で愛してくれる人に巡り会えて結婚し幸せになった。
聖女としては捨てられてしまったけれど、一般女性としての幸せは手に入れることができたので、これはこれで人生としては良いものになったと感じている。
◆終わり◆




