自分の方が可愛いと思い込んでいた意地悪な双子の妹、王子に見初められた私に先を越されて発狂する。
「あんたってさぁ、ほんと、あたしと違ってだっさいよね」
私には双子の妹がいる。
彼女の名はエリリ。
どちらが姉とかどちらが妹とかどうやって決まったのかは知らない――ただ、気づけばエリリが妹と言われていたのでそれで定着したのだ。
エリリは私より気が強く自信家で、私より可愛いことを誇りに思っている。
「あんたと双子って言うの恥ずかしいのよね~」
誇りに思っているだけならまだいい。
自信があることは悪いことではないから。
しかし、彼女は意地悪で、ことあるごとに私を下げるようなことを言ってくる。
その点は迷惑である。
やめてほしい。
でも今さらそんなことを言っても聞いてもらえないだろう。
だって、これまでずっとそういう関係できたから。
もはやこの関係性を変えることはできない。
「あんたなんて一生結婚できないんじゃない? あ、そっか、売れ残りの不細工男と結婚すればいいよね~。それならよりどりみどりかも?」
◆
ある日、私は、街を歩いていたところを目撃されたことで王子に気に入られた。
そして求婚される。
まさかの展開だ。
私はそれを受け入れた。
――そのことを知ったエリリは激怒した。
「はぁ!? 王子!? どうしてあんたなのよ! 何かの間違いでしょ、あんたみたいな地味でだっさいのが王子に見初められるわけがない!!」
そんなことを言われてしまった。
でももはや彼女に対して何かすることはない。
ここから出てゆけるのなら。
私はもう彼女に気を遣って生き続ける必要などない。
「本当よ。私、彼のところへ行って生きるわ。さよなら、エリリ」
これでもう彼女に虐められ続けなくて済む。
「ちょっと! 何それ! 待ちなさいよ! 双子でしょ? 双子の妹を置いていくっていうの!?」
「私と双子って言うの恥ずかしいのでしょう? ……良かったじゃない」
「はぁ!? 何よ生意気な!」
「じゃあ私はこれで。さようならエリリ」
今、とても爽やかな気分だ。
私は私の人生を歩める。
自由を手に入れられる。
◆
その後、私は王子と結ばれ幸せになれたのだが、エリリは怒りによってどうにかなってしまい心の病になってしまったようだ。
私がいなくなってからというもの、彼女は毎日のように怒りを爆発させるようになり、友人などと会った時にも相手に当たり散らすようなことをするようになっていったそうで――あっという間に周囲から人がいなくなったそうだ。
それでも面倒をみてくれた心の広い親にでさえ、彼女は酷い当たり散らし方をしたらしい。
一日中よく分からない単語を発して泣き叫びながら暴れ回って家具や壁を破壊し続けることもあるそうで、とても普通の生活をできる状態ではないそうだ。
意地悪でも普通に暮らしていた過去のエリリはもういない。
◆終わり◆




