婚約破棄された瞬間女神さまが現れて……。~戸惑っているうちにざまぁ完了していました~
私には三つ年上の婚約者がいる。
オレス・オーガンという赤毛の青年だ。
彼との出会いは学園時代のあるパーティー。彼が惚れたと言ってやたらと近づいてきて、不気味に思っていたのだけれど、気づけば婚約することとなっていた。
それがここまでの経緯、なのだけれど……。
「悪いね、急に呼び出したりして」
「いえ」
「今日は伝えなくちゃならないことがあるんだ」
「……何でしょうか?」
「実はね、君より素晴らしい女性に巡りあったんだ。そこで……」
数秒の間の後。
「君との婚約なんだけど、破棄とすることにしたよ」
告げられた、次の瞬間。
突如何もなかった空間が発光して。
そこに一人の女性が現れた。
オレスも困惑している。
「貴女は……一体?」
『わたしは女神』
「女神、さま、ですか?」
彼女は頷いた。
『気の毒なお嬢さん……身勝手な男に翻弄されて……しかし安心してくださいね、この世は貴女だけが損をするほど理不尽にはできていません』
女神さまはオレスの方を向く。そして片手を伸ばす。するとその手のひらから緑色の光線が放たれて。オレスは一瞬にして火に包まれた。
「う、うわわわわ!」
それから一分も経たないうちにオレスは消滅した。
あれは火ではなかったのだろうか……?
多分、特殊な炎だったのだろう。
素人の勝手な想像だけれど。
ある種の魔法だったのかもしれない。だって、もし普通の火だとしたら人間がここまであっという間に消滅することはないだろう、さすがに。
「これは……」
『わたしの仕事はここでおしまいです。貴女はどうか、幸福に生きてください。どうか安心して、今からでも幸せにはなれます』
「え……っと、あの……女神さま、ありがとうございます」
頼んでもいないのにオレスへの復讐が果たされた。
何とも言えない気分だ。
望んでいなかった復讐が目の前で行われる経験なんて初めてで。
ま、私は前を向いて生きていくこととしよう。
◆
その後、私は伯母の紹介でとても優秀な学者と出会い、彼と結ばれた。
彼は一日のほとんどの時間を研究に費やしている。しかしそれでも私のことは気にかけてくれていて。たまに家に帰ってきた時には面白い話を聞かせてくれるし親切にしてくれる。
だから私は彼と生きられることを嬉しく思っているのだ。
◆終わり◆




