お父様、娘は自分のための道具ではありませんよ。ま、言っても無駄でしょうから……私は消えます。
「エリナ、お前はオップ家に嫁ぐのだ。そうすることで我が家も富を得ることができる。いいな? お前は我が家の繁栄のために生きれば良いのだ」
私の父は私を家のための道具としか思っていない。
だからこそ勝手に婚約を決めた。
彼は自分の娘でさえ自分のために使うものとしか思っていないのだ。
でも……私は絶対に嫌。
父が自分の都合で勝手に決めた人と結ばれる?
そんなことは受け入れられない。
私にだって人格があるのだ、何でもかんでも受け入れて大人しく従えるわけじゃない。
だから、婚約者と初めて会う日に、私は家から脱走した。
家はどうにかなってしまうかもしれない。でもそんなことはどうでもいい。娘を人間として見ず道具として利用しようとするから悪いのだ。
◆
その後私は人口がかなり多い王都で働きながら生活を始めた。で、その暮らしの中で出会った画家をしている青年と仲良くなって結婚。あれから数年が経った今も彼と共に幸せに暮らしている。
そういえばこれは噂で聞いたのだけれど。
私の父はあの日私にいなくなられたことで相手の家を激怒させてしまったらしく、慰謝料という名で大量のお金を払うことを求められてしまったそうだ。
さらに父は社会的な信頼を失い、今は狭い家へ引っ越して一人寂しく暮らしているそうだ。
◆終わり◆




