勝手としか言い様がない理由で婚約破棄されたので、痛い目に遭っていただくことにしました。
その日は曇りだった。特に何ということのない日。平凡を絵に描いたような……そんな日であったのだが。
私は婚約者ルテインに呼び出されたため、彼の自宅へ向かった。
そこで、私は彼から告げられる。
「お前との関係は終わりにする」
最初そう言われて。
反応に困って戸惑っていると。
「婚約は破棄、ってことだよ」
そう続けられてしまった。
いや、最初に「お前との関係は終わりにする」と言われた時点で薄々分かってはいたのだ。そういうことなのだろうな、と、何となく想像はできていた。ただ、絶対にそういう意味だという確信はなく。それで反応に困っていたのである。
「急ですね……ええと、何か理由が?」
一応尋ねてみると。
「お前より魅力的で胸も大きい最高の女に出会ったんだよ。だから俺は彼女と生きていくんだ。お前みたいないろんな意味でちっせー奴とはもう関わりたくねえんだ。だから婚約を破棄することにしたんだ」
なんという勝手な理由だろう。
でもそれが本当の理由なのだろう。
何かを伏せるためならもっとまともな理由を言うだろうから。
「そう……分かりました」
こうしてルテインとの関係は終わってしまった。
だがこのまま黙ってはいられない。
あんな勝手な理由で婚約を破棄するなど許されたことではない。
彼には少し痛い目に遭ってもらおうか。
まず私は父を通じてルテインが勤めている先のお偉いさんにこの件について話してもらった。で、ルテインと解雇するように頼んでみた。すると相手は案外すんなり受け入れてくれた。拒否される可能性は高いと思っていたのだが、意外とそんなことはなかった。というのも、彼は職場でもなかなかやんちゃなようで、会社も彼の扱いに困っていたようなのだ。
そしてルテインは職を失った。
彼は職を失ったことで結婚しようと思っていた女性に婚約を破棄されたうえ暴言を吐かれ、心を病んでしまったそうだ。
また、憂鬱をどうにかしようとして酒に頼った結果肝臓を悪くしてしまったそうで、その治療代がかさんだことで親との関係も著しく悪化してしまったらしい。
今やルテインに光はない。
彼は、愛する人も頼れる人もいない孤独の極みのような世界の中で、一人寂しく酒の隠れ飲みをしているだけだそうだ。
一方私はというと。
やたらとだじゃれが好きな八つ年上の男性と結婚した。
彼はことあるごとにややくだらないだじゃれを吐くが、私は実はそういうところも嫌いではない。何だかほっこりするからである。彼といると私だけでは感じられない刺激を感じることができて楽しい。
◆終わり◆




