威張っている系婚約者が婚約破棄を告げてきたので私は私の道を行きます！
「お前みたいな貧乏娘を引き取ってくれる男なんざ俺くらいのものだぞ！ 感謝しろよ！」
婚約が決まった日にそんなことを言ってきて、それからもやたらと私を見下すような発言をしてきていた婚約者ムロンだったが。
「お前との婚約、破棄することにしたからな」
今日、いきなり、婚約破棄を告げてきた。
お前みたいな貧乏娘を引き取ってくれる男なんざ俺くらいのもの、感謝しろ――ではなかったのか？
「婚約破棄、ですか」
「あぁ。お前みたいな女と生きるなんて人生一回捨てたも同然、そんなことには耐えられない。そう思ってな。それで婚約は破棄することにした。……それに、もっと良物件に出会ったしな」
私はこうして急に捨てられた。
◆
でも捨てられたからと挫けたりはしない。
私は私で生きていく。
前を向いて。
ということで。
ちょっとした人脈からクレープ店で働き出した私は、やがてある画期的な商品を発明したことで大金持ちになった。
大金持ちになったところ、ムロンが急にやって来て「金持ちになったらしいな、なら話は別だ。もう一度やり直してやってもいい」などと言ってきたが、私はそれを丁寧に断った。
あんな風に私を捨てた男とやり直す？
馬鹿か。
意味が分からない。
そんな人間、どこにもいないだろう。
◆
その後私は仕事関連で知り合った資産家の男性と結婚。
今は街の外れの屋敷にて二人のんびりと暮らしている。
一日中のんびりできる、というのは、なかなか嬉しい生活だ。
もっとも、完全に自由なわけではなくてしなくてはならないこともあるのだけれど……。
でも、穏やかな日々は幸福に満ちている。
一方ムロンはというと、あの後容姿が気に入った女性に急にプロポーズしたところ酷い言葉で拒否されたために感情的になって女性を殺めてしまい、殺人者として牢屋に入れられることとなったそうだ。
◆終わり◆
