いつもか弱い女を演出して私の邪魔をしてきた妹、私の婚約者を奪い取ったことで落命することとなる。
「あたしぃ~、姉と違って幼い頃から身体が弱くてぇ~、いっつも大変な思いしてきたんですよぉ~」
「そうなんだ、それは大変だね。守ってくれる人がいると良いんだけど……」
「そうなんですぅ~。リリアン様のような素敵な殿方で良い方がいるといいなぁって思っているんですよぉ~、なんちゃって~。うふふ」
私の妹であるルルアはたびたびか弱い女を演じては私の人生の邪魔をしてきた。
そして今もまたそう。
私の婚約者であるカインの前でか弱く儚い女を演出して気を引こうとしている。
嫌な予感しかしないのだが……。
「ルルアちゃんみたいな可愛い子なら今日からでも守ってあげたいくらいなんだけどな」
「ええ~照れちゃいますぅ~。でも駄目ですよ姉がいるんですからぁ~」
◆
数日後。
「ごめん、君との婚約は破棄することにした」
カインが急にうちへやって来てそう言ってきた。
「婚約破棄?」
「ああそうだ」
「そんな。急ね。どうして」
「実はさ……ルルアちゃんと一緒に生きる決意を固めたんだ」
やっぱりか。
あの時の嫌な予感は的中してしまったみたいだ。
「そういうことだからさ。ごめんだけど、君との関係は白紙に戻すよ。じゃ、そういうことなんで。さようなら」
こうして私はカインに切り落とされてしまった。
その後、カインはルルアと婚約し、のけ者となった私は放置で二人は仲良く散歩していた。腕を組んで、身体を密着させて、いちゃつくような甘い声を発しながら。
◆
カインとルルアが婚約した数日後、「カインのところへ行く」と言って家を出ていったきりルルアが戻らなくなった。親がカインに連絡したが「来ていない」とのこと。さすがにこの幸福な状況で自死はない。なので、行く道の途中で事故や事件に巻き込まれたことを疑い、親は地域警備隊に捜索願を出した。が、大人数で捜索してもらってもなお、ルルアが見つかることはなかった。
だが、それから数ヶ月が経ったある日のこと、カインの家の近所の人から異臭の通報があったことでルルアは見つかった。
ただ、彼女はとうに亡くなっていて。
カイン宅で発見された彼女はずっと前に亡くなった亡骸の彼女でしかなかった。
その後調べによって判明した話によると。
あの日の晩、ルルアとカインはカイン宅にて一緒に過ごしていたそうなのだがちょっとしたすれ違いから喧嘩になってしまい、カインは衝動的にルルアを殴り殺してしまったそうだ。
で、しばらくして落ち着いたカインは「やってしまった」と焦り、慌てて自宅の地下室にルルアの亡骸を埋めたとのことだ。
これほどの期間見つからなかったというのも不思議ではあるが……恐らく、隠し方が良かったのだろう。
いや、殺めた者の身を隠すこと自体は良くないことなのだが。
ちなみにカインはというと、殺人と亡骸を隠した罪の両方に問われて牢屋にぶちこまれた。
◆
あれから二年、私はとある見合い会にて知り合った歴史ある貴族の家の子息である青年と結婚した。
ルルアはもういないので、彼女に邪魔されることはもうない。
それは嬉しい。
彼女の死を望んでいたわけではないけれど、でも、邪魔されることはないと思うと安心すると共に爽やかな気持ちになれた。
◆終わり◆




