絶世の美女でもないくせにお高くとまって俺の夜の誘いに応じない女とはもうやっていけない、とのことで、婚約破棄されました。
「君みたいな絶世の美女でもないくせにお高くとまって俺の夜の誘いに応じない女とはもうやっていけない。ということで、婚約は破棄とする! ……いいな。分かったならさっさと去ってくれ。君の顔を見ているだけでいらいらして俺の心に汚いものが溜まるんだ」
その日は驚くくらい突然やって来た。
婚約者ブルベから告げられた婚約破棄。
それは、私と彼の関係を一発で断ち切る、ある意味宝剣のようなものでもあった。
とはいえ、さすがにここまでさらっと言ってくるとは思わなくて。
告げられた直後は驚き戸惑った。
こんなあっさり終わるものなの、と。
けれど、彼が婚約破棄を望むならそれでもいい、という思いだったので……特に抗おうとはしなかった。
そもそも、夫婦でもないのに夜の誘いを断っただけで激怒されるなど、私にはとても理解できないことだ。そこまで感性が異なっていると、正直、ここを乗り越えてもきっとまた揉め事が起こるだろう。ならば、ここで終わりにしておくというのも、ある意味良い方法とも言えるのかもしれない。
「承知しました。それでは、私はこれで。失礼いたします」
こうして、ブルベとの婚約期間は終わった。
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婚約破棄となった私は、すぐに次の相手を探すことはしなかった。
どうもそういう気分にはなれなかったのだ。
なので、気分を変えるため、昔からの趣味の編み物に力を注ぐことにした。
幸い親は理解してくれたので何も言われなかった。
その点、私は恵まれていたと思う。
それから数ヶ月が経ち、とある催しで出店したところ私が勝手に編み出して作っていた『あみぐるーみんぐ』という手作りぬいぐるみが大人気となり、それによって私は一気に有名人になった。毎日問い合わせが殺到し、新聞からの取材も相次いで。また、それに伴って、お金も急激に物凄く入ってきて恐ろしいほどの大金持ちになった。
こんなことになるなんて……、と、汗をかいたくらいだ。
また、『あみぐるーみんぐ』の大ファンになった王子から結婚を申し込まれ、私はさらに有名になっていくこととなる。
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あれから数年、私は今、『あみぐるーみんぐ』考案者として活動しながらも王子の妻として生きている。
王子の妻となることはまったく想定していなかったことではあるが、やりたいことをやって生きられる環境にあれるというのは何よりも嬉しくまたありがたいことだ。
今、私は、城にて幸せに暮らしている。
そういえば、これはどうでもいいことだけれど。
ブルベはあの後複数の女と夜遊びを続けていたために病気を貰ってしまい、その病気の治療によって生殖能力を失うこととなったそうで……それによって落ち込みがが酷くなり、皆が馬鹿にして笑っているという妄想に取り憑かれて、もうずっと自室から出られないような状態だそうだ。
◆終わり◆




