王女の婚約者であることを利用して好き放題していた彼は婚約破棄によってすべてを失い孤独になったようです。
この国の王女である私には婚約者がいる。
彼の名はエーヴェル。
私より少し下の身分ではあるが、貴族のような家の子息である。
この彼、婚約が確定するまでは心優しく丁寧な良い人であったのだが、婚約が確定した途端私への接し方は雑になったうえ周囲にも威張り散らすようになった。
また、王女の婚約者であることを利用してやたらと権力を主張し、さらには何人もの女と関係を持ったり借金をしてギャンブルに溺れたりするようになった。
「エーヴェルさん、もう貴女と関係を続けることはできません」
「何を言うんだ? 無駄だよ。だってもう婚約したからね、今さら破棄することなんてできないよ」
「できるわ。父も貴方の行いには怒っているの」
「はい~? 無理無理無理~。へっへっへへへ。王女様だからって何でもできるって勘違いし過ぎだよ~」
やたらと煽ってくるエーヴェル。
ここではっきりさせておかなくてはならない。
そうしなくてはいつまでも舐められそうだ。
私は父をその場に呼んだ。
「エーヴェル! お前のような女とギャンブルに溺れた男に娘はやれん! よって、婚約は破棄とする!! いいな!! 縁はこれで終わりだ!!」
こうして、私とエーヴェルの婚約は破棄となった。
婚約者がいる身で他の女とやたらと絡みいちゃついたり持ってもいなかったお金を賭けごとに費やすような人を見ていると不安しかなかったので、関係を終わらせることができて良かった。
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その後私は隣国の第三王子を夫として迎えた。
彼が我が国へ来てくれることとなったため、私は国から出ずに済むこととなったので、非常に嬉しかった。
しかも、彼は人としても良い存在だった。
とにかく心が優しい。
騙されやすそう、という不安は少々あるが、そんな彼を私が支えていけたらと思う。
ちなみにエーヴェルはというと、それまで濃密な関係を築いていた女性たちからは王女の婚約者という位を失ったことで馬鹿にされ見捨てられ、今は孤独の身でギャンブル中毒と借金返済地獄に苦しんでいるそうだ。また、これまでの行いが悪すぎて親とも既に疎遠になっていて、頼れる人は一人もいないらしい。
◆終わり◆




