親友に婚約者を奪われました。~私の犠牲の上に成り立つ関係なんて上手くいくわけがない~
「婚約は破棄とさせてもらう」
そう告げてきたのは、私の婚約者である彼モルテイン。
彼の横には一人の女性がいる。驚いたことに、彼女は私の親友であるリイナだった。二人が一緒にいるというだけでも少々驚くべきことなのだが、妙に仲良さそうだからより一層驚きである。
「ごっめんねー。ちょっと喋ってたら意外と仲良くなっちゃってさー。あたしら婚約することにしたんだよねー。てへっ」
リイナは悪気なさそうにそんなことを言っていた。
「そういうことなので、俺たちは二人で幸せになる。お前はもう出てくるな。どちらとも会わないで生きていってくれな」
「待って、それはさすがに滅茶苦茶過ぎ……」
「うるさいな! こんなところで粘るなよ、みっともねー女、消えろ」
こうして私はモルテインに捨てられた。
親友に婚約者を奪われるなんて。
何とも言えない気持ちだ。
でも、そうなってしまった以上その現実を変えることはできないので、ここは諦めるしかなさそうだ。
◆
それから数年、父親の仕事に同行する形で都にある城へ行った際に偶々廊下で出会って知り合った王子と絵画の話で盛り上がり、身分などまったく気にならないくらい仲良くなった。で、それから何度か会って喋るようになり。しばらく経った頃、急にプロポーズされ、驚きながらも彼と結婚することとなった。
こうして私は王子の妻となった。
結婚が決まった時には両親にもかなり驚かれてしまったけれど……皆受け入れて祝福してくれたので、そのおかげで祝福される結婚をすることができた。
ちなみにモルテインとリイナはというと。
あの後めでたく結婚したものの、モルテインが早速やたらと浮気をし始めたことで大喧嘩が多発するようになってしまったそうだ。リイナは自分の意見をはっきり言える性格なので、より喧嘩になりやすかったのだろう。
そうして、半年も経たないうちに夫婦仲は最悪のものになってしまったらしく。
毎日のように口喧嘩をしていたらしい。
近所の人の目撃情報によると、時には取っ組み合いに発展することもあったようだ。
しかしそれでも一応二人で生活してはいた。
だが。
ある日、仕事で疲れていたモルテインは、衝動的にリイナを近くのフライパンで殴り続けてしまった。それによってリイナが死亡。それによってモルテインは人殺しとして拘束され、死刑になったそう。
最期は「殺す気はなかったんだ」と叫び泣きながら火に投げ込まれたらしい。
とはいえどちらにも同情はしない。
二人の関係というのは私の犠牲の上に成り立つ関係だから。
あんなやり方で結ばれても、上手くいくはずがないのだ。
◆終わり◆




