貴様のような女、クズだ! とか言われて婚約破棄されました。婚約破棄は構いませんが……仕返しはしますよ。
「貴様のような女、クズだ! よって、婚約は破棄とする!」
その日、婚約者オーレンジは、急にそんなことを告げてきた。
「まったく、貴様、いつまでそこにいるだ。早く俺の視界から消えてくれよ。分からないのか? 貴様のような女が視界に入っているだけで俺の価値まで下落するんだ」
しかもさらに失礼なことを付け加えられてしまった。
何なら無理矢理視界に入って嫌がらせしてやろうか? とも考えたが、今以上にややこしいことになりそうな気がしたので、さすがにそれはやめておいた。
敢えて嫌がらせするほど暇でもない。
こうして私とオーレンジの関係は終わりを迎えた。
その後私は父親にオーレンジから言われたことを明かした。すると父親は怒り。知り合いの権力者に話して仕返ししてやると言ってくれた。いや、私がそれを望んだわけではないのだけれど。ただ、父親はその気になっていたから、私もそれに乗っておくことにしたのだ。絶対仕返ししたいとは思わないけれどできるのならそれでも良い、程度の思いである。
数週間後、オーレンジは地域警備隊によって拘束され、他社を侮辱した罪によって更正施設という名の牢に入れられた。
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あの婚約破棄から数年、私は、婚約破棄されてからよく通っていた珈琲店の店長である青年と仲良くなり結婚した。
今は彼から色々習いつつ珈琲店の手伝いをしている。
彼は結婚した直後「手伝わなくていいよ、そのために結婚したわけじゃないから」と言ってくれていたのだが、私がやりたかったので、少々無理を言って手伝わせてもらっているのである。
最初のうちは失敗も少なくなかったけれど。
段々慣れて。
最近では迷惑をかけることはほぼなくなっている。
ちなみに、オーレンジはというと、現在もまだ更正施設内での生活を強制されているらしい。
早朝五時には起床し、五分で身を整えたら、少し身体が揺れるだけでも激怒されるような朝礼、そこから話を聞く時間が数時間続き、今度は数時間にわたって行進の練習、昼食の時間は五分だけ、午後は厳しい環境での労働を休みなく行わされる、そして隅々まで清掃、夕食の時間も五分間だけ、そしてまた労働……で、夜中の三時頃に就寝。
そんな暮らしだそうだ。
◆終わり◆




