珍しい髪色を持って生まれた私のことを気持ち悪いとか何とか悪く言った元婚約者とその母親は、謎の病によって自ら滅んでいったようです。
この国の人々の髪は金色だ。中には赤毛の者や黒髪の者も交ざってはいるけれど。それら以外の色の髪の人物となると多くはない。いや、ほぼいないと言っても問題ないくらいだろう。
しかし、私の髪は、生まれつき白色である。
我が家の者が皆白い髪を持っているわけではない。
一家でもその髪を持つのは私だけ。
そんなこともあって、私は、幼い頃から周囲から虐められることも多かった。
ただ、幼い頃に一度だけ会った謎の老人からは「その髪は神の加護があるという証明、たとえ周囲から何と言われようとも大事にしなさい。そうすれば、その髪は君を護ってくれるだろう」と言われた。
その記憶があるから、私はずっと、この髪を染めたり変色させたりはしなかった。
ただ、どうしてもこの髪の色が足を引っ張ることはあって。
「あなたみたいなねぇ、そーんな白い髪、気持ち悪いのよ。そんな髪の人が他にいて? いないでしょう。もう分かるわね? そういうことよ、あなたはおかしいの」
婚約者オーレブの母親からは初対面でそんなことを言われて。
「君との婚約は破棄とする! ……君みたいな怪しい髪の持ち主が婚約者というだけで俺までひそひそ言われるんだ。耐えられないよ。たとえ家柄はまともだったとして、だ。君はきっと悪魔に愛されでもしたんだろう。……もう二度と俺に近づかないでくれ」
さらに、オーレブからもそんなことを言われて婚約破棄された。
「君の妹はまともなのにな。あーあ、外れを引いてがっかりだ」
◆
だが、婚約破棄直後、事が動いた。
この国の最高神官が『白髪の娘を傍におかねば国が滅ぶ』というお告げを受けたのである。
それによって国王は白髪の娘を王子の妻とすることを決定。
早速探し始め、私が見つかった。
「この国のため、我が息子の妻となってくれないかね」
城へ呼び出された私は国王からいきなりそのようなことを言われる。
その後王子とも直接会うことになって。
王子は感じの良い人だったので、私は、頼みを受け入れることにした。
こうして王子と結ばれた私は幸せになれたのだが、後に聞いた噂によればオーレブとその母親はあの後酷い目に遭ったようだった。
オーレブは、私に婚約破棄を告げたあの日の晩に腕が増える奇病を発症し医師の治療を受けるも一向に改善せず、絶望して屋敷の三階から身を投げ、生を終えたそうだ。
で、オーレブの母親は、息子を失った悲しみによって壊れてしまって。二十四時間ずっとまともに眠れない状態となってしまい、さらに、一週間ほど経ってからは延々と踊り続けてしまう謎の病を発症。それによって町の人たちから「悪魔でも憑いたのだろう」と言われ、最終的には町の安全のためにと火の中に入れられて燃やされたそうだ。
もっとも、二人のことなど今はもうどうでもいいことだ。
私は城にいる。
彼らがいたあの町へ戻ることはない。
◆終わり◆




