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婚約破棄されても、護りたかったのです。
貴方を庇って、倒れる。
身体が地に落ちる。
痛みがどこからともなく襲ってきて。
でも……今、貴方の顔が、すぐそこにある……。
「そんな、どうして……どうして!? どうして庇ったんだ!? 婚約は破棄したじゃないか!!」
「私……貴方を……」
唇が赤く濡れる。
このままでは生命の灯火は消えるだろう。
でも、それでも構わない。
「……婚約破棄されても、護りたかったのです」
そう、私は、彼のために生きられればそれだけで良かった。
たとえ婚約は破棄となったとしても。
貴方のために最期を迎えたかった。
「そんな! どうして!」
「……愛しています、いつまでも、貴方のことを」
彼のために生き、彼のために死ぬ。
その望みは果たされた。
私は後悔はしない。
貴方のため散れるならそれでいい。
◆終わり◆




