愛し合っているを盾に無理矢理くっつこうとした婚約者と妹。……幸せになんてなれるはずがない。
私は神の力の一部を分け与えられた女。
見た目はただの人間でしかない。
けれどもこの身には特殊な力が宿っている。
それは、私を傷つける者をこれでもかというくらい痛い目に遭わせるという、まるで悪魔の化身であるかのような力だ。
けれどこの力は絶対的なもので。
これまで私を傷つけた者は皆例外なくこの力の餌食となった。
五歳の頃私を虐めていた近所の同年代の女の子たちはある日を境に次々と命を落としていったし、十代中盤に私の悪口を言い広めた女の子は怪しいおじさんに連れ去られ数年監禁された後に従わなかったからというだけの理由で理不尽に殺害された。
もちろんこれだけじゃない。
それ以外にも似たような事例はいくつもあった。
けれど、私のこの力に気づく者はおらず。
それゆえ被害者も絶えることがない。
◆
「俺、お前との婚約は破棄することにしたから。妹さんに乗り換えるわ」
「ごめんなさいねっお姉様! 私のほうが気に入られちゃったみたい! 申し訳ないけれど、これからは私が彼の妻として生きていくのよ!」
二十歳になった春、婚約者ルトベスと私の妹が二人で私のところへやって来た。
で、そんなことを言ってきた。
さすがに無理があるだろう、と思った私は二人に対して抗議したのだが、それが聞き入れられることは一切なく。
二人は「愛し合っている」ということを盾に自分たちの行いを正当化した。
でも……許されるわけがない、そんなこと。
◆
婚約破棄された数日後、やけくそで参加した城で開催される晩餐会にて思わぬ形で王子に気に入られた私は、彼から求婚されることとなった。
まさかの展開に戸惑いつつも。
私はそれを受け入れた。
そうして彼との道を歩み出す。
結婚式の準備が進んでいたちょうどその頃、私は親から聞いたことで、妹が街に買い物に出掛けたきり行方不明になっていることを知った。彼女が着ていたと思われる服だけは路地で見つかったそうだが、彼女自身は数ヶ月経った今でもまだ見つかっていないそうだ。
そして、ルトベスは彼女を失ったことで心が壊れてしまい、今はよく分からない言葉や笑い声を発することと謎の踊りを踊ることしかできなくなってしまっているそうだ。
また、ルトベスの奇行が遺伝的な病気なのではと噂されるようになったことで彼の一族まで周囲から冷ややかな目を向けけられるようになってしまったらしい。中には、遠い親戚にルトベスがいたために婚約を破棄された者もいたくらいだそうだ。
◆終わり◆




