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婚約破棄後、手が触れて。
今朝、婚約破棄を告げられた。
そして今。
つい先ほど知り合った彼と隣り合って言葉を交わしている。
私は個人的な事情を話してしまった。
本当はこんなことを聞かせるつもりなんてなかったのに。
「そうですか。……色々あったのですね」
彼は少し気まずそうに目を細めた。
「馬鹿ですよね、こんなことをぐちぐち言って」
何を見るでもなく視線は宙を漂わせて。
「いえ! そうは思いません」
彼ははっきり返すけれど。
どうしても申し訳なくて。
「でも私たち、出会ったばかりですよね」
「それはそうですが……でも、話していただけて嬉しいです」
次の瞬間、彼の手が私の手にそっと触れた。
「これも何かの縁でしょう」
「……えっと」
「よければ気が済むまで話してください。それであなたが楽になれるなら、嬉しく思います」
これは夜明け。
私たちの始まり。
◆終わり◆