自分を凄く可愛いと思い込んでいる妹、見初められなくて正気を失う。~ま、現実に目を向けてくださいね~
私には三つ年下の妹がいる。
アネネという名の彼女は、親からちやほやされて育ってきたこともあってか自分を凄く可愛いと思い込んでおり、私のことを下げつつ自分の方が女として上なのだとやたらと主張してくるのだ。
「お姉さま、気の毒ですわねぇ……わたくしと姉妹になってしまうなんて」
平然とそんなことを言ってくるし。
「あらあらお姉さま、そんな服装ではわたくしと姉妹と言うと笑われてしまいますわよ? ま、引き立て役にはちょうどいいですけれど」
とか言ってくることも日常茶飯事である。
可愛いならわざわざ姉を下げるようなことを言うなよ……、とは思うけれど。でも突っ込むとややこしいので、これまでは流してきた。少しでも反発するようなことを言うと号泣する演技で私を悪者に仕立ててくる、これが厄介なので、なるべく刺激せず流して放っておくようにしているのだ。
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ある日、結婚相手を探している王子と会う催しに、アネネと共に参加することになった。
彼女は早速張り切っていて。
行く前から王子と結婚する気満々だった。
「お姉さま! しっかりわたくしを引き立ててちょうだい!」
「ええ……そうね」
「まさか、お姉さま、王子を狙おうなんて思っていないでしょうね!? うふふ、そんな無茶なことは考えない方が良いですわよ。あなたは一生わたくしの引き立て役、良いですわね!? わたくしの引き立て役になれることを光栄に思って生きなさい!!」
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「貴女、とても美しいですね。しかも、ただ美しいだけじゃない。凛とした魅力があって、女性として素晴らしい。これからの時代、国の中枢にも貴女みたいな女性が必要だと思います。どうか、私と結婚してほしいのです。……どうでしょうか?」
王子に見初められたのはアネネではなく私だった。
「んもぉ~ご冗談を~、どうしてそんな地味姉にばっかり絡まれるんですのぉ? わたくしの方がぜぇ~ったいに満足していただけますのにぃ~」
「そういうところが嫌なのです、近づかないでください」
「へ……?」
「乳を突き出し媚を売るような女性は王家の繁栄のためにはなりません。それに、これは個人的な話ですが、私は貴女のようなすり寄ってくる女性が大嫌いなのです」
むきになって王子の気を引こうとしたアネネは王子に嫌悪感しかないような目で見られたうえ、会場から去ることを強制された。
「見て、あれ、お下品だこと!」
「みっともないわね」
「さすがにあれは……自信家過ぎですわね」
皆、プライドが高いうえ必死過ぎて憐れなアネネを見て、くすくすと笑っていた。
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その後、私は王子と結婚し、城にて生きてゆくこととなった。
まさか私がこんなことになるとは思わなかったけれど。
でも悪い流れではない。
愛されて生きられるなら場所なんてどこでも良い。
ちなみに、アネネはというと、あの日自宅へ帰るや否や正気を失ったそうだ。奇声を発しながら夜な夜な暴れまわり、家具から何からを壊し尽くして、両親を大変困らせたらしい。また、それからも自室にこもって出てこないかと思えば暴れまわるということを繰り返し、酷い状態だったそうだ。
もうしばらく会っていないけれど、今や彼女はよく分からない言葉しか発することができないらしい。
◆終わり◆




