病になったことを告げると婚約破棄されました。~それでも前を向いて幸せになってみせます~
「……ということで、病にかかっていることが発覚しました。死には至りません、ただ……完全に治癒する保証はないとのことで」
伝えると、婚約者オレスはさらりと言ってくる。
「そっか。じゃ、婚約は破棄な」
彼の言い方はさっぱりしたもので。
こちらへの配慮など一切なかった。
「病人のおもりする人生なんて絶対ごめんだわ。じゃあな、ばいばい」
こうして私は婚約破棄された。
オレスに切り捨てられたのだった。
分かってはいた。病のことを話したらもう今まで通りではいられないだろう、と。ただ、それでも、心のどこかでは少し期待してしまっている私もいて。もしかしたら何か良い返事が貰えるのでは、と思ってしまっている部分もあったのかもしれない。彼に多くを求めるつもりはなかったけれども。
病に婚約までも奪われた。
それは心を傷つける事実だった。
けれども私は諦めない道を選んだ。
きっと幸せになってみせる。
前を向くことにした。
まずは治療に専念する。
回復しないことには話は進まないから。
◆
婚約破棄された私のもとへ現れたのは、医者になった幼馴染みの男性だった。
彼の名はアイズ。
明るい彼は大人になってもなお真夏の太陽のように明るかった。
「話は聞いたよ。その病、絶対治してみせる!」
担当してくれる医者が知り合いというのは、一見嫌なようではあるけれど、言いたいことを言えるという意味では良い面もある。元々仲良しだった関係のため、なおさら言いやすい。思いや考えをはっきり伝えやすい。
「婚約破棄されるなんて辛いだろうけど……でも! 絶対治るから! 安心して信じて!」
「ありがとう」
礼は言ったけれど、彼の言葉をそこまで信じてはいなかった。
◆
あれから二年。
私の病は本当に完治した。
アイズの言葉は偽りのものではなかった。
「やったね! 治ったね!」
「ありがとう……信じられない嘘みたいだわ」
喜んでいると、アイズは急に真面目な顔つきになる。
「実は、言いたいことがあって」
「何? ……まさか、他の病が発見されたとか?」
不安を抱くが。
「君と結婚したい」
アイズは真剣な面持ちで告げてきた。
こちらとしては想定外で。
何も言えなくなってしまった。
「ゆっくりでもいい、考えてほしいんだ」
「……驚いたわ」
「だろうね。だから急がない。時間はあるから、考えてみて?」
「……そうね、分かったわ」
◆
数年後、私はアイズと結婚した。
私は今も健康なままでいられている。
あの病が再発することはなかった。
これからのことは分からないけれど今のところは健康そのものである。
こんな幸せを手に入れることができるなんて、夢みたいだ。
ちなみに、オレスはというと、あの後顔面に謎の水疱が発生する病にかかってしまいその時の婚約者から婚約の破棄を言いわたされてしまったそうだ。で、それによって生きることに絶望した彼は、病の発症と婚約破棄から数ヶ月も経たないうちに自ら死を選ぼうとして。しかしそれは失敗に終わり、寝たきりの状態で生きなくてはならない状態になってしまったそうだ。
◆終わり◆




