貧乏臭いと言われ婚約破棄された私は得意なことを活かして働き素晴らしい縁にまで恵まれました。
「君みたいな草刈りにばかり詳しいような貧乏臭い女とはやっていけないよ。よって、婚約は破棄とさせてもらうね。ま、君には僕に相応しいほどの魅力はなかったってことさ。恨むなら精々魅力不足だった自分を恨んでくれよな」
その日、私は婚約破棄された。
彼オードラーと共にあった一ヶ月半ほど、私はいつも緊張状態にあった。というのも、彼はことあるごとに驚くほど細かいことを指摘してくるのだ。少しでも気に食わないことがあればことあるごとに言ってくる。それこそ、理不尽に思えるようなことであっても。だから彼といるとのんびりしていられる間はないのだ。
それからの解放、という意味では、婚約破棄はありがたいものだった。
「ただいまー」
私は取り敢えず実家へ帰った。
「おかえりー……って、え!? 早くない!?」
実家へ帰った私を一番に迎えてくれたのは母親だった。
「驚かせてごめん、母さん」
「い、いや、いいんだけれど……随分早かったわね」
「実は婚約破棄されて」
「え!? こ、こここ、婚約破棄!?」
母親は狼狽えていた。
「だから私、また、ここに戻って暮らしたいの」
「い、いいけど……」
「ありがとう母さん」
こうして私はまた実家暮らしを再開する。
とはいえ、一度家から出たこともあり、また家で養ってもらうのは少々申し訳ない気もして。そこで私は、草刈りの最中に発見された使用用途のある草を集めて売る仕事を始めた。両親は気を遣わなくて良いと言ってくれたけれど、家のため己のために私も少しは銭を稼ぎたかったのだ。すべて親に頼りっきりというのは嫌だった。
そうして始めた草売り屋。
最初はかなり小規模で買い手もほぼいないに近かったのだが、こつこつ活動を続けているうちに徐々に買い手が増えてきて。
一年もすれば、買ってくれる人はかなり増えた。
草売りは順調。
このままいけば生活費はこの稼ぎで賄えるようになっていくかもしれない。
◆
あれから五年。
草売りの規模はかなり大きくなった。
それこそ、一人でさばくのは難しいくらい。
稼ぎも、今では、一般男性一人分くらいは十分にある。
そんなある日。
「この前購入させていただいた草で作った薬のおかげで父が助かりました。本当にありがとうございました。よければお礼をさせてください」
三週間ほど前に草を買ってくれた良家の息子である男性がそんなことを言ってきた。
「お礼なんて、結構ですよ」
「しかし……! 人一人の命が助かったのです、お礼しないわけには……!」
それが私にとって最高の出会いとなるとは、この時はまだ知らなかった。
◆
その後私は良家の息子である彼と結婚した。
意外に思われるだろうか?
私もそう思う。
彼と結ばれる未来なんて考えてもみなかった。
いや、そもそも、そんな発想自体がなかったのだ。
でも現実は面白いもので。
私と彼は結ばれた。
一度は草刈りによって捨てられた。が、今度は草刈りによって出会いに恵まれた。草刈りは悪いことのみならず良いことも連れてきてくれたのだった。
そうして彼と結ばれた今、私は幸せに暮らしている。
ちなみに。
オードラーはあの後異国から来たバナナ商人に勧められて始めた事業で大失敗し借金だらけとなったそうだ。
今は借金返済のため奴隷のように毎日働き、結婚どころではないとか。
私のことを相応しくないとか何とか言っていたが……ま、今はもう、そのようなことを言うことすら叶わない状況だろう。
自業自得なのだけれど。
◆終わり◆




