婚約破棄を告げられ切ない気持ちを抱えていたら。
今朝、婚約破棄を告げられた。
私のことを好きになれないから、だと。
それが理由らしい。
正直薄々感じてはいたのだけれど……直接言われるとやはり少し切なかった。
だってそうだろう?
あなたには価値がない、と言われているようなものなのだから。
世の中にはいろんな人がいて、いろんな価値観があり、いろんな感性がある。良いもの、悪いもの、なんて、見る者によって変わるもの。
それは理解しているけれど、それでも切なさは消えず。
◆
翌日、近所に住む幼馴染みがやって来た。
「婚約破棄されたんだって?」
「何それいきなり。感じ悪いわよ。これでも一応弱っているのに」
「嬉しいよ!」
「は?」
「だって……これで君に結婚を申し込める!!」
……理解不能だ。
「励ましてるつもり? なら余計なことしないで」
「違う。本気だよ」
「え……、ちょ、何を言い出すの?」
「だ、か、ら、本当はぼく君と結婚したかったんだ」
婚約破棄を告げられ切ない気持ちを抱えていたら。
唐突に始まっていた。
新しい物語が。
◆終わり◆




