見下され婚約破棄された私は大富豪との縁に恵まれ幸せになれました!
「ろくに金もねー女なんぞ意味ねーんだよ! てことで、婚約は破棄な! じゃ、びんぼーめすはさっさと消えてくれ!」
その日、私はそう言われ、切り捨てられた。
私の家と彼の家はどちらも領地持ちの家。つまり同じくらいの格の家なのである。ただ、彼の家の方が若干裕福で、彼はそのことをやたらと言ってきていた。お前んちは貧乏だろうが、と言われたことなんて、これまでにも星の数ほどあったように思う。彼は私を見下すことで心を満たしていたのかもしれない。
とはいえ、相手がそんななので、婚約破棄されてもそれほど悲しくはない。
勝手なことを言うなぁ、とは思う。
けれども、終わりにしたいのなら好きにしてくれ、と思える一種の余裕のようなものもあった。
いつまでもあのような心ない人と付き合う気はない。
しかし女側から婚約破棄は言い出せないので。
あちらから終わりを告げてくれてある意味では助かったとも言える。
◆
それから一年ほどが経過した頃、親戚伝いに知り合った大富豪の男性との結婚が決まった。
彼はお金持ちだ。けれども私や私の家を貧しいと馬鹿にしたりはしない。私よりずっと多くのお金を持っているのに見下してきたりはしないのだ。それどころか、領地持ちの家であることを褒めてくれたり、興味を持ってくれたりして。私という存在のことをも常に尊重してくれる。
いびきが若干うるさいけれど……。
それ以外は完璧だ。
彼といると楽しい。
共に行きたいと思える。
◆
数年後、私は、元婚約者の彼が詐欺に手を染めて逮捕されたことを知った。
国民向け給付金を不正に手に入れるという詐欺が流行っているそうで、彼もまたそれに手を染めていたそうだ。
彼は今は牢屋の中。
冷えきった残飯のような食事しか与えられず、賃金はなく長時間労働を強いられている、とのことである。
今の彼にはお金どころか最低限の自由さえないのだ。
私は富豪の妻となり、彼は罪人として奴隷のようになり。
婚約破棄となった二人のその後は対照的だった。
◆終わり◆




