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婚約破棄された空飛ぶ令嬢は鳥の神との縁を得る。

 鳥人族の血を引くと言われている家に長女として生まれたモビエラは、美しい長い髪と整った容姿ゆえに気づけば周囲から憧れの眼差しを向けられる存在になっていた。


 そして今から遡ること数ヶ月。

 権力ある家の息子であるココに「自分のものにする」と言われたうえほぼ強制的に婚約させられた。


 それから二人は婚約者同士として関係を保っていたのだが……。


「モビエラ、君がこんな可愛くない女だとは思わなかったよ。外見だけだったなんてがっかりだ。ということで、婚約は破棄とするよ。僕の尊い時間を君に割くことはもうできない」


 ある春の日、モビエラはココからはっきりと告げられてしまった。


 モビエラは振り回された悲しさを抱きながらもそれを受け入れた。

 そうして二人の関係は終わることとなる。

 穏やかなその春、モビエラは明るい心を持っていられなかった。


 曇り空のような心でモビエラは実家へ帰る。


 それからしばらく彼女は別荘で暮らすようになった。

 母親が一緒に住んで世話をする。

 そこは二人だけの世界、しかし、静かな環境に身を置くことでモビエラは徐々に立ち直っていく。


 その頃だ、モビエラがかつて好きだった『空を飛ぶこと』を思い出したのは。


 普通の人間であれば空は飛べない。飛ぶとしても何かしらの機械が必要となる。が、彼女の場合は何もなくても飛び上がることができるのだ。鳥人族の血ゆえの特殊能力である。


 それからモビエラは別荘近くで空を飛ぶようになった。

 高いところから見える美しい景色は彼女の心を何より癒やした。


 そして、出会いもあった。


「きみ、人間なのに飛べるんだね」

「……鳥人族の血を、引いておりまして……実は」

「美しい飛び方だね」

「その……すみません、なんというか……」


 モビエラが出会ったその少年は鳥の神であった。

 二人はよく空で会い語り合うようになる。

 そうしているうちに徐々に親しくなっていって。


「モビエラ、将来……きみと、一緒に生きたい」


 ちょっとしたきっかけで知り合うこととなった二人だったが、いつしか特別な二人へと変わった。


「私もです」



 ◆



 数年後。

 鳥の神は大人の男性の姿となってモビエラの前へ現れた。


 そして結ばれた。


 二人は今も定期的に一緒に空を飛ぶ。

 鳥の群れと戯れることもある。

 そして、日頃は、人里から離れた別荘にて穏やかに暮らしている。


 モビエラはとても幸せになっている。


 一方ココはというと、モビエラを切り捨てた数ヶ月後に、ぶりっこで周囲の女性陣から凄く嫌われている女性と結婚した。しかし女性は結婚するや否や豹変し、急激に攻撃的になって。結果、ココは女性から毎日のように罵倒されるようになってしまう。


 最初のうちはココも言い返していたのだが徐々に圧倒され、次第に何も言い返せないようになっていって。

 しまいに心を病んでしまった。


 だが容赦ない妻からは今でも暴言を吐かれ続けている。



◆終わり◆

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