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これまで我慢してきましたが……いつまでもここにいる気はありません! そして、あなたとの婚約は破棄します!!

 私はエブレスという名の青年と婚約した。

 彼は私より五つ年上。

 けれどそのくらいなら気にならないだろうと思っていた……婚約前は。


 婚約を機に同居を求めたエブレス。結婚してからにしてほしいとこちらが頼んでも聞こうともせず、彼の希望に逆らうことは許されなかった。そうして私は彼の家へ行かなくてはならないこととなった。


 で、ほぼ監禁に近い状態になってしまった。


 私は基本一つの部屋から出られない。

 許可がある時だけしか部屋から出してもらえない。


 しかも、彼の靴を定期的に舐めることや彼の肌を舐めて吸うことを強制され、きちんとできなければ殴られたり服を破られたりする。


 しかし下手に抵抗しては何をされるか分からない。

 そこで私は証拠だけを集めるように努めた。

 ここから出られた時に婚約破棄できるように、酷い目に遭わされていた証拠を収集する。


 そんなある日。


 地震が起きた。


 家が壊れたので、その隙に私はエブレスの家から脱出。

 集めた証拠品は持って逃げることができた。


 いきなりの災害は恐ろしい、が、私にとっては良い機会でもあった。


 もちろん、災害が起きたことを良かったと言う気はないが。


 エブレスの家から脱出した私は実家へ帰る。

 そして事情を説明。

 それを聞いた両親はかなり驚き憤る。


「うちの娘になんということを! 許せない! とーちゃんに任せろ、そんな婚約はすぐに破棄してきてやる!」


 特に父親は激しく怒っていた。


 その後、父親が手続きを進めてくれて、それによって私とエブレスの婚約は破棄ということになった。

 監禁に近いことをされたうえ酷いことをされていた、その証拠もあったので、手続きはわりと順調に進んだようだった。


 集めた証拠が役に立って良かった……。


 婚約がなくなった私は、以前のように実家で暮らすようになった。


 ここは安心できる。

 嫌なことを強制されもしない。


 ここには確かな安らぎが存在している。



 ◆



 あれから数年、私は親の仕事を継いだ。

 エブレスの件もあって男性への苦手意識があるため結婚はしなかったが、今は仕事が波に乗っているので毎日充実している。


「とーちゃんの後を継いでくれてありがとうなぁ」


 父親はいつもそう言ってくれる。

 男性は苦手だが父親は平気だ。


 そういえば最近になってエブレスのその後について聞いたのだが、彼はあの後また他の女性にも同じようなことをしたそうだ。だがその女性は抵抗するタイプで。大人しく従わないことに苛立ったエブレスはその女性を激しく蹴り、殺してしまったそうだ。


 で、もう隠せなくなった。


 彼は人殺しの罪で治安維持組織に拘束されたらしい。

 今は牢に入れられているらしく、罪人ゆえ奴隷のような扱いを受けることとなってしまっているとか。


 だが自業自得だ。



◆終わり◆

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